- ワクチン接種後に赤く腫れ上がったり、熱が出るのが怖いです
- あらかじめ解熱薬を使用すると改善しますか?
ワクチン接種後には、痛みが生じたり、熱が出ることがあるため、解熱薬の使用を希望される方もいると思います。
また、あらかじめこういった副反応が起こらないよう「予防的に解熱・鎮痛薬を」と考える方もいるようですが、実際のところ予防効果は本当にあるのでしょうか。
今回は、1歳の小児において、解熱鎮痛薬がワクチン接種後の局所反応の予防に有効かを検討した研究をご紹介します。
- ワクチン接種後の局所反応に対して、解熱薬を予防的に投与することの是非を検討した論文
- 接種前後に使用すると、1歳児のDPTワクチンの追加接種においては発熱や局所反応の予防効果はあるかもしれない
- 抗体の獲得率は議論されておらず、不十分な検討
World J Pediatr. 2008 May;4(2):127-9.
ワクチン接種直後の解熱薬使用は、抗体獲得に悪影響をもたらす可能性があります。このため、特別な事情がない限り、避けた方が良いと私が考えています。
解熱薬の使用は、ワクチン接種後の発熱や局所反応を予防する?
研究の背景/目的
非盲検ランダム化試験は, 追加ジフテリア破傷風全細胞百日咳 (DTP) ワクチンの発熱反応に対する鎮痛薬の効果を明らかにするために, 15~20か月の乳児で実施した。
研究の方法
全部で270人の健康な幼児がDTPワクチンを接種する際に、3つのグループに分けた。
- ワクチン接種直後にアセトアミノフェンを使用
- 2時間後に使用
- 発熱 or 不機嫌があれば、どの時点で使用する
発熱は腋窩温が38°C以上と定義した。
研究の結果
局所腫脹,疼痛および紅斑の発生率は3群間で有意差はなかった。 接種後7日間の発熱、易刺激性、食欲不振、嘔吐等の全身反応の発現率に3群間で差は認められなかった。乳児の45.1%, 46.7%および51.9%は,ワクチン接種後24時間以内にそれぞれ1群, 2群および3群で発熱(腋窩温≧38°C)を示した (P>0.05) 。 アセトアミノフェンの第二用量は,予防群よりも対照群で少なかった (P=0.009) 。
結論
DTPワクチン接種時またはワクチン接種2時間後のアセトアミノフェン投与は,追加ワクチン接種後の発熱反応の発生に影響しない。
鎮痛薬の不必要な使用は避けるべきである。
考察と感想
トルコで行われた研究のようですね。発熱とその他の有害事象の分布は以下の通りでした:
直後 | 2時間後 | 熱が出たら | |
発熱 | 45.1% | 46.7% | 51.9% |
痛み | 43.8% | 44.0% | 50.6% |
発赤 | 24.7% | 25.3% | 27.2% |
15-20ヶ月に行うDPTワクチン接種後に関しては、解熱薬を使用しても、発熱や痛み・発赤の予防効果はわずかですね。
まとめ
今回は、トルコで行われた研究で、ワクチン接種後の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)の使用が、幼児において発熱や局所反応などを軽減するか確かめています。
ワクチン接種直後に解熱薬を使用しても、発熱などの副反応を予防する効果はわずかでした。
一方で、ワクチン接種直後の解熱薬使用が抗体獲得率に影響するか検討されていないのが懸念点です。
まとめnoteもあります。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし
知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。
感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/11/21 09:53:24時点 Amazon調べ-詳細)
絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし
こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/11/21 13:16:41時点 Amazon調べ-詳細)
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
noteもやっています