医療の質

アメリカにおいて、医療の質は向上したのか?[2002-2013年]

今回は医療の質に関して報告された論文をご紹介しようと思います。

医療は様々な地域、年齢などを対象に提供されています。「どこにいっても、そんなに変わらないのでは?」と感じる方がいるかもしれませんが、実の所、受診された医療機関などによってはその質にはばらつきがあります。

もちろん、良い医療、悪い医療と簡単に白黒つけられないものも多くありますが、その一方で、エビデンスレベルの高いと分かっている医療が行われていなかったり、禁忌となりうる医療が提供されてしまっているケースもあります。

2000年に医療の質を問題視した米国での研究がでて、以降、10年が経過したところで研究を行なったようです。

ユーキ先生
ユーキ先生
現在はガイドラインも多数あり、医療の質は均質なのではないでしょうか?

Dr.KID
Dr.KID
自分たちの観測範囲以上に、医療のばらつきはあると思います。一緒に論文を読んでみましょう。

ポイント

  •  アメリカを対象に行われた研究
  •  2002-13年の時点では、改善傾向はあるものの、推奨レベルの医療を受けられた患者のばらつきは改善はまだ必要であった

   アメリカからの有名な報告です。

アメリカにおいて、医療の質は向上したのか?[2002-2013年]

研究の背景/目的

10年以上前に行われた研究で、米国の医療の質には広範な欠陥があることが明らかになった。

以降、地域や国を挙げて医療の質の向上と患者体験の向上を目指した取り組みが行われてたが、そのような取り組みが成功したかどうかについての情報は不完全である。

このため、この研究では、2002年から2013年までの米国における外来患者における医療の質と患者体験の変化を測定した。

研究の方法

医療費パネル調査(Medical Expenditure Panel Survey:MEPS)を用いて、2002年から2013年までの経時的な傾向を分析した。
参加者は、18 歳以上で外来診療を受けた米国の成人である(毎年 20,679-26,509 人)。

外来患者における医療の質の指標は、先行研究および国内組織によって承認された指標を用いた。

39の医療の質指標に基づいた9つの臨床的な医療の質の指標(推奨される医療処置などが「不十分」と判断された5つの指標、不適切な画像撮影の回避が可能である「過剰」と判断されうる4つの指標)、総合的な患者体験評価、および6つの指標に基づいた2つの患者の医療の経験評価(医師とのコミュニケーションおよび医療へのアクセス)を元に行われた。

Dr.KID
Dr.KID
全体において、質が担保された医療が提供された割合、といった感じでしょうか。

研究の結果

2002年から2013年までの間に、4つの臨床的質の複合項目が改善した:

  1.  推奨される治療(36%→42%;P < 0.01)
  2.  推奨されるカウンセリング(43%→50%;P < 0.01)
  3.  推奨されるがん検診(73%→75%;P < 0.01)
  4.  不適切ながん検診の回避(47%→51%;P = 0.02)。

2つの臨床的質の複合指標は悪化した:

  1. 不適切な治療の回避(92%→89%;P < 0.01)
  2. 不適切な抗生物質の使用の回避(50%→44%;P < 0.01)。

3つの臨床的質の指標に変化はなかった:

  • 診断・予防検査の推奨(76%)
  • 糖尿病ケアの推奨(68%)
  • 不適切な画像撮影の回避(90%)。

医療ケアの経験を高く評価した参加者の割合は、

  • 医療全般(72%→77%)
  • 医師とのコミュニケーション(55%→63%)
  • 医療へのアクセス(48%→58%)

で改善した。

結論

10年以上の努力にもかかわらず、アメリカの成人に提供される外来診療の臨床的な医療の質は一貫して改善されていない。

一方で、患者の経験は改善されている。

医療ケアの不足は、アメリカ国民の健康に深刻な危険をもたらし続けている。

考察と感想

米国では10年以上にわたり医療の質の向上に努めてきたにもかかわらず、成人に提供される外来診療の質は一貫して向上していない、という結果だったようです。

一方で、患者の経験には改善が見られたのは良いことなのではないでしょうか。

現在の医療の質の不足は、医療を受ける機会を逸しただけでなく、無駄や過剰使用による潜在的な副作用なども含まれたようです。

Dr.KID
Dr.KID
Choosing wiselyも、(有害となる可能性があり、有益性が少ない)過剰な医療をやめようという流れですしね。

まとめ

今回の研究は、アメリカにおける医療の質を2002-2013で検討した研究です。

徐々に改善傾向ではあるものの、まだ一貫性がなく、不十分という結果だったようです。

 

医療の質の関連書籍はこちら↓↓

created by Rinker
¥4,180
(2024/12/22 12:29:52時点 Amazon調べ-詳細)

created by Rinker
¥3,300
(2024/12/22 12:29:53時点 Amazon調べ-詳細)

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/12/22 02:10:54時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。