今回は医療の質に関して報告された論文をご紹介しようと思います。
医療の質の指標は様々あるようですが、今回は小児の健診などを対象にした質の指標を検討した論文をご紹介しようと思います。
- アメリカを対象に行われた研究
- 健診などの医療の質を計測した論文
アメリカからの報告です。
健診などの医療の質はどう計測する?[アメリカ編]
研究の背景/目的
今回の研究は、生後 4 か月から 35 か月の乳幼児において、予防・発達サービスの分野医療の質を調べるために行われた。評価には、以下の項目が使用された
- 予備的なガイダンスと親への教育
- 家族の心理社会的リスクのスクリーニング
- 家庭内での喫煙と薬物・アルコール使用のスクリーニング
- 家族中心のケアの提供
の4つの複合的な質的尺度
研究の方法
幼児期の健康に関する全国調査(National Survey on Early Childhood Health)(N = 2068)のデータを用いて、4つの複合的なパフォーマンス指標を算出した。
これら4つの測定値の信頼性と冗長性の程度が評価された。これらの尺度を採点するための4つの方法が使用された。
子どものサブグループの質スコアを計算し、ロジスティック回帰分析を実施して、推奨されるケアを受けることと人口統計学的変数、健康の関する変数、および医療システムに関する変数との関連性を検討した。
研究の結果
使用したスコアリング方法にかかわらず、家族中心のケア、家庭での喫煙および薬物・アルコール使用のスクリーニングの分野では、パフォーマンスが最も高かった。
予備的なガイダンスと家族の心理社会的リスクの指導/教育では、パフォーマンスが最も低かった。
保護者の指導の好みや心理社会的な話題についての話し合いに対する信念を考慮したスコアリング法を用いて、推奨されたケアを受けている幼児の保護者の間で、複合的な質の指標のスコアは13.5%から59.6%の範囲であった。
複合質のスコアを用いたところ、13.5%〜59.6%の保護者が推奨された医療を受けていたことが分かった(スコアの算出には、保護者の指導の好み、心理社会的な話題についての話し合いの考え方が考慮されていたようです)。
小児科医による育児指導、教育、スクリーニングに対して、94.0%の保護者が1つ以上の領域において、不十分と感じるものが1つ以上あると報告していた。
4つのケア領域のそれぞれで「ニーズが満たされなかったことがある」と親が回答した15.3%の子どものうち、無保険の子どもと生後18~35ヵ月の子どもは不均衡な割合で存在していた。
各複合尺度の信頼性は高かったが、どの複合尺度においても単一の項目と残りの複合項目との間に高い相関を示すものはなかった。子どもの複合尺度のいずれか1項目のパフォーマンスは、他の尺度のパフォーマンスをやや予測する程度であった。
子どもの年齢、人種、保険加入状況、母親の教育、配偶者の有無、親の言語、およびその他の要因に基づいて、パフォーマンスには統計学的な有意差があるようであった。
結論
4つの補完的な複合質指標を用いた全国的な結果から、米国における幼児に対する予防および発達サービスの質の向上の必要性が確認された。
4つの指標は、質の向上が最も必要とされる医療の分野と子どものサブグループを特定している。さらに、この指標は、健康管理のトピックと予防と発達ケアの4つの本質的なサービスを簡潔に包括的に評価できる。
予防・発達サービスの有効な他の尺度、または単一の予測能の高い尺度が特定されるまで、医療提供者や医療システムのパフォーマンスを評価するためには、今回のように推奨される医療の複数の指標を使用することが必要である。
考察と感想
長くて読むのも大変な論文でした…
最後のAppendixにはいいリストがあり、こんなガイダンスが行われていますよ、というのは参考になるかもしれないと思いました。
- 母乳育児(4~9ヶ月)
- 寝る時の体位など(4~9ヶ月)
- 夜中の起床と癇癪(4~9ヶ月、10~18ヶ月)
- 子どもが自分のニーズをどのように伝えるか(4-9 月)
- やけど防止方法(例:お湯の温度 家庭内)(4~9ヶ月)
- 添い寝(10~18ヶ月)
- 哺乳瓶を終了する準備(10ヶ月~18ヶ月)
- 指導としつけの技術(10~18、19~35 月)
- 子どもが使って理解している言葉やフレーズ (10~18歳、19~35ヶ月)
- トイレトレーニング(10~18歳、19~35ヶ月)
- 寝かしつけの日課(19~35ヶ月)
- 危険な状況を避けることを子供に教える(例、 コンセント、ストーブ、物の上に登る、路上走行) (19~35ヶ月)
- 子どもが自分でやり始めるかもしれないこと (例:洗濯、ドレッシング) (19-35ヶ月)
- 子どもが他の子どもとどのように仲良くなるか(19~35 月)
- 食事・給食に関する課題
- チャイルドシートの使用
- 託児の手配
- 子どもへの読書の重要性
- 予防接種
アメリカの場合、健診に避ける診療時間が長いので、こういった細やかな点を指導できるのでしょうが、日本の小児科外来だと少し難しいかもなぁというのもあります。とはいえ、必要なことですから、医療者同士で協力したり、日本の医療アクセスの良さを活かした指導(少量・頻回にするなど)など、改善点はあるかもしれないです。
まとめ
今回の研究は、アメリカにおける小児の予防の医療の質の指標を検討した研究でした。
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アメリカですと、Bright Futuresが有名でしょうか↓
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小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
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小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
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