今回は、乗り物酔いに対して、繰り返しの曝露や呼吸のコントロールによって「慣れ」が促進されるかどうかを検討した研究した論文をご紹介します。
- プロメタジンの筋肉注射がパフォーマンス,気分,乗り物酔いに及ぼす影響を検討した研究
- 現在使用されているプロメタジンの効果的な投与量が、タスクコンポーネントを著しく損なう可能性をがある
Cowings PS, Toscano WB, DeRoshia C, Miller NE. Promethazine as a motion sickness treatment: impact on human performance and mood states. Aviat Space Environ Med. 2000 Oct;71(10):1013-22.
2000年に公表されたようです。
乗り物酔いの治療にプロメタジンは有効?[アメリカ編]
研究の背景/目的
宇宙飛行士の乗り物酔いの治療には,プロメタジンの25mgまたは50mgの筋肉内注射がよく用いられる。
本研究では,プロメタジンの筋肉注射がパフォーマンス,気分,乗り物酔いに及ぼす影響を検討した。
研究の方法
被験者は12名の男性(平均年齢36+3.1歳)で,1日のトレーニングと3つの治療条件(プロメタジン25mg注射,プロメタジン50mg注射,滅菌生理食塩水のプラセボ注射)のいずれかを割り当てられた。
それぞれの条件は7日間隔で設定され,8〜10時間の日中に12のパフォーマンスタスクのテストと回転椅子による乗り物酔いテストが行われた。
トレーニング日には,安定性と熟練性を確立するために各課題のトレーニングを行った。
治療条件は相殺され、投薬またはプラセボの投与には二重盲検法が用いられた。
研究の結果
プラセボと比較して、プロメタジンの両投与量で、統計的に有意なパフォーマンスの低下が観察された。
パフォーマンスの低下は、平均血中アルコール量当量レベルがプロメタジン25mgで0.085%、50mgで0.137%であった。気分尺度の結果は、個人の主観的な経験に有意な変化を示し、覚醒状態と疲労度が最大で悪化した。
プラセボと比較して、25mgの投与量のみが乗り物酔い耐性を有意に増加させた。
結論
これらのデータは、宇宙飛行士の乗り物酔い対策として現在使用されているプロメタジンの効果的な投与量が、宇宙飛行士の運用能力のうちタスクコンポーネントを著しく損なう可能性を示唆している。
考察と感想
プロメタジンは、フェノチアジン系化合物で、抗ヒスタミン作用があります。通常、抗ヒスタミン薬として分類され抗アレルギー作用などがあるが、古い第一世代抗ヒスタミン薬で、鎮静が強くでます。
つまり、ぼーっとさせることで、乗り物酔いを軽減させてしまおうという戦略なのだと思います。
ただ、当たり前ですが、ぼーっとすることで、認知機能を含めたパフォーマンスは落ちてしまいました。
まとめ
プロメタジンの筋肉注射がパフォーマンス,気分,乗り物酔いに及ぼす影響を検討した研究でした。
宇宙飛行士の乗り物酔い対策として現在使用されているプロメタジンの効果的な投与量が、タスクコンポーネントを著しく損なう可能性を示唆されています。
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