今回は、乗り物いに対してオンダンセトロン(制吐剤)は有効か、安全かを検証したRCTの紹介です。
- 乗り物酔いに対して、オンダンセトロンとジメンヒドリナートの有効性を検証したRCT
- オンダンセトロンとジメンヒドリナートのいずれも、高感受性者群における乗り物酔いを予防しなかった
Muth ER, Elkins AN. High dose ondansetron for reducing motion sickness in highly susceptible subjects. Aviat Space Environ Med. 2007 Jul;78(7):686-92. PMID: 17679566.
2007年にアメリカから公表されたようです。
乗り物酔い予防におけるオンダンセトロンの効果[アメリカ編]
研究の背景/目的
オンダンセトロンは、術後の悪心、化学療法に伴う悪心・嘔吐の予防効果が証明されている。
この薬は、副作用がないことから、現在、乗り物酔いの治療薬として検討されている
本研究では、高感度被験者を対象に、プラセボ、ジメンヒドリナート、オンダンセトロンの乗り物酔い防止効果を比較検討した。
研究の方法
乗り物酔いの頻度が高く、市販薬による乗り物酔いの自己治療が肯定的な報告である被験者63名を20名ずつ3群に分けた(3名は除外)。
20rpmで回転させながら頭部運動を行う試験の1時間前に、プラセボ、ジメンヒドリナート、オンダンセトロンのいずれかを投与した。
回転前と回転中に、乗り物酔いの症状と胃電図のデータを収集した。
研究の結果
耐えられる頭部動作の回数、回転時間、症状質問票の得点に群間差はなかった。
全群で、通常の3サイクル/分の活動がわずかに有意に減少し[F (1.45) = 3.04, p = 0.088]、胃の頻脈性不整脈[F (1,45) = 9.71, p = 0.003]が増加したが、これは一般的に乗り物酔いの発生に関連するパターンであった。
結論
オンダンセトロンとジメンヒドリナートのいずれも、高感受性者群における乗り物酔いを予防しなかった。新しい治療法の継続的な開発が必要である。
考察と感想
ジメンヒドリナートはドラマリン®️という名称で発売されているようです。
迷路機能亢進抑制作用により、優れた鎮暈、鎮吐効果を示し、また、嘔吐中枢抑制による鎮吐作用を有し、抗ムスカリン作用により乗り物酔いに対しても有用と考えられているようです。
残念ながら、オンダンセトロンと同様に、今回の研究では有効性は示唆されませんでした。
まとめ
乗り物酔いに対して、オンダンセトロンとジメンヒドリナートの有効性を検証したRCTです。
オンダンセトロンとジメンヒドリナートのいずれも、高感受性者群における乗り物酔いを予防しなかっようです。
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