今回は、乗り物いに対してショウガは有効か、安全かを検証した前後比較研究の紹介です。
- ショウガ根が乗り物酔いの有効化を実験室で検討した前後比較試験
- ショウガ根を使用したところ、旅行中に感じる乗り物酔いのスコアは軽快
- 前後比較試験であり、RCTなどで有効性を再検証する必要はある
Nunes CP, Rodrigues CC, Cardoso CAF, Cytrynbaum N, Kaufman R, Rzetelna H, Goldwasser G, Santos A, Oliveira L, Geller M. Clinical Evaluation of the Use of Ginger Extract in the Preventive Management of Motion Sickness. Curr Ther Res Clin Exp. 2020 Jun 15;92:100591. doi: 10.1016/j.curtheres.2020.100591. PMID: 32714473; PMCID: PMC7378854.
2020年にブラジルから公表されたようです。
乗り物酔い予防におけるショウガの効果[ブラジル編]
研究の背景/目的
乗り物酔いは、様々な状況で引き起こされ、主に吐き気と嘔吐を特徴とする。生姜は、化学療法に伴う消化器症状、つわり、術後の吐き気、乗り物酔いなどの治療に広く使用されている。
主要な研究目的は、乗り物酔いの治療における ショウガ(Zingiber officinale) 抽出物を評価することであった。
副次的目的は、治療前後の乗り物酔い評価質問票(MSAQ)スコアおよびサブスコアに対する治療効果を評価すること、および治療の忍容性を評価することであった。
研究の方法
Zingiber officinale 160 mg 抽出物(gingerols 8 mg を含む)を旅行前に経口投与した場合としなかった場合の乗り物酔いの転帰を評価するオープンラベル、単一群試験が行われた。
すべての患者が、少なくとも15分間の旅行後に、4回に分けてMSAQに回答した。
トリップ1(治療前)、トリップ2、3、4(試験薬による経口治療後)が行われた。
主要評価項目は、Trip 2、Trip 3、Trip 4において、治療前のスコア(Trip 1)と比較してMSAQで20点以上の改善を示した患者さんの割合としました。
副次的評価項目は、Trip2、3、4においてMSAQサブスコアの改善を示した患者の割合、治療関連の有害事象を示した患者の割合、治療前後の医師の評価スコアであった。
研究の結果
184名の患者を対象とし、174名が治療を完了した。MSAQスコアの合計が20点以上減少した患者は、Trips2、3、4でそれぞれ26.52%、29.89%、29.31%であった。
Trips2、3、4では、20点以上の改善を示した患者数に有意差はなかった(P = 0.9579)。トリップ2、3、4では、トリップ1と比較して、MSAQの合計スコアが有意に減少した(P < 0.0001)。
MSAQスコアの合計は、治療下で実施された各トリップで変化しなかった(P = 0.28)。
トリップ2、3、4では、トリップ1のスコアと比較して、すべての領域のサブスコアに有意な(P < 0.001)改善がみられた。
Visit 2 での医師の評価スコアに有意な改善がみられた(P < 0.0001)。
有害事象は 31 例で報告され、主に胃腸系に影響があった。
24名(13.04%)の患者が治療に関連すると考えられる有害事象を39件報告した。Visit 1と比較して,Visit 2では身体所見に大きな変化は認められなかった。
結論
これらのオープンラベル、歴史的対照試験結果は、無作為化、盲検化、プラセボおよび活性物質対照臨床試験の必要性を示唆するものである。
考察と感想
本文中には副作用の記載もあり、多いものから消化不良(26%)、げっぷ(26%)、頭痛(9%)、吐き気(7%)、不眠(5%)などがあげられていました。
先ほども記載しましたが、前後比較試験であるため、本当に「有効」であるかの判断はやや難しいように思います。というのも、乗り物酔いには「慣れ」がありますので、2回目、3回目の実験の際にスコアが改善する可能性があるからです。
また、これまでの研究ではZ officinaleは1000〜2000mgほど使用していましたが、今回は160mg (gingerolとして8mg)とかなり少ないです。
今回の研究結果で有効性をいうのはやや無理があるように思うので、著者らの言う通りRCTが必要というのは同意です。
まとめ
ショウガ根が乗り物酔いの有効かを実験室で検討した前後比較試験となります。
ショウガ根を使用したところ、旅行中に感じる乗り物酔いのスコアは軽快したようです。
しかし、前後比較試験であり、RCTなどで有効性を再検証する必要はあるでしょう。
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