新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの際、マスクは広く使われている防御策である。
先行研究では、マスクをすることが学校での二次感染の減少と関連するかどうかを評価することには限界があり、この論文で解析が行われたようです。
- 261の幼稚園から高校までの地区(100万人以上の生徒と職員に相当)で行われた研究
- 学校内での二次感染は、わずか(10%未満)
- 未調整の分析では、ユニバーサル・マスキングは、任意のマスク着用と比較して、二次感染を72%減少させることに関連
School masking policies and secondary SARS-CoV-2 transmission. Pediatrics. 2022
アメリカで2022年に報告された研究です。
学校での感染対としてのマスク着用とSARS-CoV-2の二次感染[アメリカ編]
研究の背景/目的
COVID-19パンデミックの期間中、マスク着用は幼稚園から12年生(K-12)の学区において、学校内での感染を制限するために広く使用されている策である。
マスク着用の影響を定量化しようとする先行研究では、学校内の総症例を評価している。
しかし、マスク着用の政策の効果をより最適に定義する指標は、学校内感染、すなわち二次感染例である。 我々は、学校のコホートにおいて、さまざまなマスク着用の規則が二次感染に及ぼす影響を推定した。
研究の方法
2021 年 7 月 26 日~ 12 月 13 日において、複数の州で前向きコホート研究を実施した。 それぞれの学区は、マスク着用の実施状況と毎週の感染データを報告した。
コンタクトトレーシングを実施し、一次感染と二次感染の判定が可能な地区を組み入れ対象とした。
マスク着用が二次感染に及ぼす影響を推定するために、quasi-Poisson regressionを使用した。
研究の結果
参加基準を満たした9州61地区の合計1,112,899人の生徒と157,069人の学校職員が参加した。 これらの地区から、一次感染40 601件、二次感染3085件が報告された。
6地区が任意のマスク着用のポリシー、9地区が部分的なマスク着用のポリシー、46地区がユニバーサルマスク着用のポリシーを採用していた。
未調整の解析では、調査期間中、任意でマスクしていた地区は、ユニバーサル・マスク地区に比べて二次感染率が 3.6 倍であり、市中感染症例 100 例あたり、ユニバーサル・マスク地区では 7.3 件の二次感染が予測されたが、任意マスク地区では 26.4 件の二次感染が予測された。
結論
コホート全体での二次感染はわずかであった(総感染数の10%未満)。
ユニバーサル・マスキングは任意のマスク着用と比較して二次感染の抑制と関連していた。
考察と感想
時期的にはデルタ株流行のタイミングですね。
対象となった年齢としてはK12ですから、幼稚園(5歳)と小学1年~高校3年の12年が相当します。
地域で分けたpopulation levelのデータを使用しているようで、7割以上の学区はユニバーサルマスクとしていたようです。途中で変更した学区もあるようで、それも考慮しての解析でした。
結果としては、二次感染の率は
・ユニバーサル:7.3/1000一次感染例
・任意:11.0/1000一次感染例
・部分:26.4/1000一次感染例
となっており、ユニバーサルマスクでの二次感染はかなり少なかったようです。
研究のリミテーションとしては、population levelのデータなので、個人レベルでの交絡は対処できなかったり、それぞれの学区のポリシーが二次感染例の判定に影響している可能性(アウトカムの誤分類による情報バイアス)がありえます。
まとめ
学校でのマスク着用に関して複数の州にまたがって行われた研究です。
学校内での二次感染は、わずか(10%未満)であったようです。
未調整の分析では、ユニバーサル・マスキングは、任意のマスク着用と比較して、二次感染を72%減少させることに関連していたようです。
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