今回は日本から公表された尿路感染症の臨床的特徴を捉えた論文です。
- 日本人小児におけるfUTIは男性優位であり,特に乳児に多い
- 起因菌は大腸菌,腸球菌が多く、抗生物質治療を開始する前に,尿検体のグラム染色を行うことが強く推奨される。
- 超音波検査のVUR検出感度は必ずしも高くはない。
Clinical characteristics of pediatric febrile urinary tract infection in Japan. Int J Infect Dis. 2021 Mar;104:97-101. doi: 10.1016/j.ijid.2020.12.066. Epub 2020 Dec 28. PMID: 33383218.
2020年に日本から公表されたようです。
日本における小児の尿路感染症の臨床的特徴
研究の背景/目的
発熱性尿路感染症( Febrile urinary tract infection (fUTI) )は、小児における最も一般的な重篤な細菌感染症である。しかし,本邦では小児fUTIの臨床的特徴を検討した研究はない。本研究の目的は、日本人小児におけるfUTIの臨床的特徴を明らかにすることである。
研究の方法
日本国内の21の病院において、多施設共同後方視的観察研究が実施された。2008 年から 2017 年の間に fUTI と診断された 15 歳未満の小児を対象とした。診断基準は、38℃以上の体温と、尿培養における単一の細菌病原体の存在であった。患者特性はカルテから得た。
研究の結果
合計で2,049人の小児が研究に組み込まれた。年齢の中央値は5カ月で、59.3%が男性であった。1歳未満が男性87.0%、女性53.2%であった。主な原因菌はEscherichia coliとEnterococcus spp.で,それぞれ76.6%と9.8%を占めた。
結論
日本人小児におけるfUTIは男性優位であり,特に乳児に多かった。また,Enterococcus spp.は2番目に多い原因菌であった。したがって,抗生物質治療を開始する前に,尿検体のグラム染色を行うことが強く推奨される。
考察と感想
個人的に興味深かったのは超音波とVCUGのところでした。
米国小児科学会のUTIガイドラインによると、VCUGはfUTIの初回エピソード後にはルーチンで実施すべきではないが、超音波検査で水腎症やその他の異常所見が認められた場合には適応となります。
しかし、軽度のVURの乳児や重度のVURの一部でも超音波検査で正常と判定されることが多く、VUR検出における超音波検査の有効性に懸念があるようです。
まとめ
日本人小児におけるfUTIは男性優位であり,特に乳児に多かった。
起因菌は大腸菌,腸球菌が多く、抗生物質治療を開始する前に,尿検体のグラム染色を行うことが強く推奨される。
超音波検査のVUR検出感度は必ずしも高くはない。
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