アレルギー免疫療法は、患者のアレルギー症状を緩和するための有望な治療法ですが、その効果は患者の服薬遵守に大きく依存しています。
本論文では、皮下免疫療法(SCIT)と舌下免疫療法(SLIT)という2つの異なるアレルギー免疫療法における患者の離脱率を比較し、治療の終了につながる主要な要因を明らかにすることを目的としています。
この研究により、患者が治療法を選択する際の意思決定をサポートし、治療の効果を最大化するための改善策を見つけるための重要な知見が提供されます。
Kiel MA, Röder E, Gerth van Wijk R, Al MJ, Hop WC, Rutten-van Mölken MP. Real-life compliance and persistence among users of subcutaneous and sublingual allergen immunotherapy. J Allergy Clin Immunol. 2013 Aug;132(2):353-60.e2. doi: 10.1016/j.jaci.2013.03.013. Epub 2013 May 4. PMID: 23651609.
SCITやSLITを開始した患者の治療順守や継続の現実は?
研究の背景/目的
効果的なアレルギー免疫療法(IT)は、患者の服薬遵守が必要です。多くの研究で、ITを受ける患者の非遵守率が高いことが示されています。皮下IT(SCIT)に登録された患者では、非遵守率が11%から50%の範囲であるのに対し、舌下IT(SLIT)の患者では3%から25%の範囲でした。
非遵守率を比較するのは難しいですが、SCITでは治療からの離脱が非遵守と定義されているのに対し、SLITでは日常投与への遵守が不十分とされています。本研究の目的は、SCITとSLITに登録された患者の離脱率を比較し、IT終了につながる主要な要因を調べることでした。
研究の方法
4年間にわたり、SCIT(n = 139)とSLIT(n = 78)に登録された患者間で離脱率、IT期間、終了理由を後ろ向きに比較しました。
研究の結果
SCITとSLITの離脱率はそれぞれ45%および41%でした(p = 0.669)。グループ間でIT期間に有意差は観察されませんでした(≤1か月, p = 0.079; 1-2か月, p = 0.486; 2-3か月, p = 0.165; 3-6か月, p = 0.575; 6-12か月, p = 0.361; 12-24か月, p = 1.000; および≥24か月, p = 0.258)。
ITを中止する理由として挙げられたものの中で、SCIT患者は不便さ(p = 0.001)を、一方SLIT患者は効果に関する懸念(p = 0.022)を主要な離脱理由として報告しました。
結論
SCITとSLITの間の離脱率に有意な差は観察されませんでした。離脱前のIT期間に有意な差はなかったものの、SCIT患者では離脱が早まる傾向がありました。ただし、2つのグループ間で離脱の理由は大幅に異なりました。
考察と感想
この研究は、皮下免疫療法(SCIT)と舌下免疫療法(SLIT)に登録された患者間での離脱率を比較することを目的としており、アレルギー免疫療法の実際の効果と患者の服薬遵守に関する興味深い洞察を提供しています。離脱率に有意な差はなかったものの、離脱理由に関しては、SCITとSLITの患者で大幅に異なっていました。
SCIT患者は治療の不便さが主要な離脱理由であるのに対し、SLIT患者は効果に関する懸念が主要な離脱理由でした。これらの違いは、アレルギー免疫療法に対する患者の期待と経験に関する重要な情報を提供し、治療法の選択や改善に役立つ可能性があります。
今後の研究では、患者の服薬遵守を向上させる方法や、治療に対する患者の期待や懸念をよりよく理解することが重要です。これにより、アレルギー免疫療法の効果を最大限に引き出すことができるでしょう。また、医療専門家は、患者のニーズやバリアに焦点を当てた個別化された治療戦略を開発し、患者に適切なサポートや指導を提供することが求められます。
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