- アセトアミノフェン(解熱鎮痛薬)はいつから使用できるのだろうか?
- アセトアミノフェンは3ヶ月未満の小児にはNG?
- 未熟児にアセトアミノフェンを投与したデータはあるのか?
「アセトアミノフェンは何ヶ月から使っていいのか?」という疑問について少し考察していこうと思います。
基本的に3ヶ月未満の発熱は検査・入院が必要なため、小児の中でも通常のかぜとは別枠のアプローチをしています。
この時期の小児には余分な薬を投与しないのが基本で、そのため解熱薬も使用しない医師が多いのかもしれません。
副作用の懸念であったり、3ヶ月未満の発熱では入院や外来で経過を追うことが多く、熱のモニターという意味で使用しない方針を取っている方が多い印象です(データではなく、個人的な日本の小児科での感想)
とはいえ、アメリカの薬の本とかを見ると、新生児でも投与量が記載されており、必ずしもNGではないのではと思いました。
実際、3ヶ月未満において使用したデータがないのかと調べたのが今回の論文です。
研究の方法
今回の研究は1995年にアメリカのスタンフォード大学付属の小児病院で行われた研究です。
対象となったのは、
- アセトアミノフェンの投与歴なし
- 32〜35週で出生
- 発熱がない
などが該当しています。
投薬について
投薬ですが、
- 20mg/kgのアセトアミノフェン坐薬
を投与して、その後4時間ほど経過を見ています。
アウトカムについて
アウトカムに関しては、動脈血からアセトアミノフェン濃度を計測しています。
- 0分
- 15分
- 30分
- 60分
- 120分
- 240分
などを見ています。
研究結果と考察
最終的に5人の小児が研究に参加しました。
- 平均33週
- 平均出生体重 2.02kg
のようです。
血中濃度について
20 mg/kgのアセトアミノフェンを使用したのちに、血中濃度を計測した結果は以下の通りです。
投与後 | 平均 | SD |
0分 | 0.20 | 0.45 |
15分 | 3.74 | 1.55 |
30分 | 6.02 | 2.15 |
60分 | 6.48 | 2.27 |
120分 | 7.38 | 4.56 |
240分 | 6.14 | 5.23 |
CmaxとTmaxについて
- Cmax = 8.38 (3.92) μg/ml
- Tmax = 78.0 (40.2) min
という結果でして。どうやらアセトアミノフェンの血中濃度ですが、鎮痛として使用する場合は血中濃度10-20 μg/mlが必要なようで、それに達していないという判断のようです。
著者らは20mg/kgでは不十分で、25-30mg/kgあたりが適正ではないかと推定しています。
他の研究結果
類似の研究結果のデータも検索しています。主に坐薬ですね。
年齢 | 投与量 (mg/kg) |
Cmax (μg/ml) |
Tmax (min) |
1-8y | 20 | 10.7 | 120 |
2m-8.3y | 15-20 | 9.3 | |
9d-7y | 7.9 | 58 | |
3.4y (0.5) |
45 | 13 | 198 |
1-17y | 40 | 17.4 | 138 |
意外と多めに使用した研究結果もありますね。
感想と考察
早産児(> 32週)においてアセトアミノフェン坐薬の薬物動態を検討した研究でした。吸収率がやや悪いせいか、20mg/kgを使用しても、有効な血中濃度には達していなかったようです。
使用の是非はおいておいて、きちんと薬物動態を検討した研究があるのを確認できた点で大変勉強になりました。
まとめ
早産児(> 32週)においてアセトアミノフェン坐薬の薬物動態を検討した研究でした。吸収率がやや悪いせいか、20mg/kgを使用しても、有効な血中濃度には達していなかったようです。
解熱薬に伴う副作用などは記載されていないため、これは別の論文を参照する必要がありそうです。
32週以降の早産児にアセトアミノフェン坐薬 20mg/kgを投与すると…
- Cmax 8.38 μg/ml
- Tmax 78 mn
- 目標の血中濃度10-20 μg/mlには不十分