ケトライド(Ketolides)は比較的新しいクラスの抗菌薬で、クラミジアやマイコプラズマに対して抗菌活性があり、マクロライドに類似しています。
この薬の特徴として、免疫調整能が報告されていますが、気管支喘息発作において、これらが有意に働くのかは不明なため今回の研究がされたようです。
今回は、ヨーロッパで成人を対象に行われたRCTの結果を見ていきましょう。
研究の方法
今回の多施設共同RCTは、
- 278名の成人
- 喘息発作開始から24時間以内
- 18〜55歳
- 喘息と診断されて6ヶ月以上経過
している方を対象に行われています。
治療について
治療は、気管支喘息の標準治療に加えて
- テリスロマイシン 10日間
- プラセボ 10日間
のいずれかを投与しています。
アウトカムについて
アウトカムは、
- 呼吸機能
- 喘息の症状(7 point scale: 0 =症状ない、6 = 重度)
- 副作用
などを見ています。
研究結果と考察
最終的に278人が参加しています。年齢は40歳、白人が9割、女性が6−7割、10年以上の喘息歴が多く、過去1年間に8割ほどの患者は喘息発作を経験しています。
61%ほどの患者は、クラミジア肺炎かマイコプラズマ肺炎に感染していました。
呼吸機能検査
初日の値を参考地にして、1秒量の変化を6週間ほど追っています。
(以下の図は原著論文より拝借)
テリスロマイシンを使用したグループの方が、治療開始2週間後の呼吸機能は若干よかったようですが、4〜6週間後はほぼ同じです。
喘息の症状について
喘息症状のスコアを0〜6点で評価していますが、初日と10日後では以下の通りでした。
テリスロマイシン | あり | なし |
初日 | 3.0 (1.4) |
2.8 (1.3) |
終了日 | 1.7 (1.1) |
2.0 (1.0) |
差 | 1.3 | 1.0 |
この差の差は 0.3 (95%CI, 0.1-0.5)でした。
副作用について
テリスロマイシン | あり N = 132 |
なし N = 131 |
下痢 | 13 (9.8) |
5 (3.8) |
嘔吐 | 7 (5.3) |
0 |
腹痛 | 5 (3.8) |
2 (1.5) |
抗菌薬を使用したグループの方が、下痢、嘔吐、腹痛といった症状はやや多いように見えますね。
考察と感想
1秒量という客観的な指標はテリスロマイシンの方が治療開始後1週間くらいは成績が良いですが、その後は同じくらいのレベルに戻っています。
喘息の症状もテリスロマイシンの方が若干良いようですが、この程度の差と臨床的な重要性が自分にはあるようには見えませんでした。
副作用は、当たり前ですが、抗菌薬を使用したグループの方がやや多いです。
60%くらいがマイコプラズマ or クラミジア肺炎となっており、やや病原体の分布が偏っている気がします。もっとウイルス性が多いのではないでしょうか?
小児の場合、喘息発作の契機はウイルス性が圧倒的に多く、この結果を一般化するのは難しいと思いました。
また、マイコプラズマを疑うような状態で、喘息発作を起こせば、当然ですが抗菌薬の投与は選択肢になります。
まとめ
成人において、テリスロマイシンは喘息発作による呼吸機能の低下や症状をやや改善させる効果があるようです。一方で、病原体の分布に偏りが多く、追加検証が必要なのと、小児への一般化は厳しいと思いました。
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