前回までは、成人のものがメインになってしまいますが、抗菌薬(特にマクロライド系)を使用しても、ほとんどメリットがなさそうな研究結果を説明してきました。
今回は、アメリカのデータになりますが、実際に病院毎に抗菌薬の投与がどのくらいばらつきがあるのかを検討した研究結果を見つけたので、そちらをご紹介させていただこうと思います。
研究の方法
今回の研究は、成人のものになってしまいますが、
- 18歳以上
- 2013-2014年に入院
- 喘息の診断(主病名)
- 呼吸不全 (主病名)+ 喘息(副病名)のコンビ
- 肺炎、尿路感染、副鼻腔炎、皮膚感染、敗血症、菌血症はない
などを参考に患者が選別されています。データベースはPremier Alliance databaseを使用したようです。
病院間での抗菌薬の使用のばらつきと、それに影響を与える因子を検討しています。
研究結果と考察
最終的に5万人ほどのデータを使用しています。抗菌薬は中央値にして三日間使用されています。よく使用されていた抗菌薬は、
- マクロライド:19%
- キノロン:16%
- 第3セフェム:9%
- テトラサイクリン:4%
でした。
抗菌薬の使用率と95%信頼区間は以下の通りです。ほぼ0%の病院から80%を超える病院もあり、かなりばらつきが大きいのが分かります。
全体としては、細菌感染症が示唆されない状況でも60%ほどで抗菌薬が使用されていました。
抗菌薬を使用しない予測因子としては、
- 黒人:0R = 0.8; 95%CI, 0.7-0.8
- 心不全:0R = 0.8; 95%CI, 0.8-0.9
- 大学関連の病院:0R = 0.7; 95%CI, 0.6-0.8
- 北東部や西部:0R = 0.8
- 患者が若い (<40歳):0R = 0.8; 95%CI, 0.7-0.8
などが該当しました。
考察と感想
アメリカやヨーロッパのガイドラインはエビデンスに基づいて書かれているものが比較的多く、日本でも参考にされている先生も多いと思います。私もそうです。参考文献なども読み込むこともあります。
一方で、ガイドラインが大々的に出ていたとしても、必ずしも従っていない病院や医師が多数あるのがわかる研究結果でした。喘息と抗菌薬を比較しても、ほぼ使用しない病院からほぼ全例使用する病院まであるのは、少し驚きですね。
日本国内や小児版でのデータもあれば見てみたいですね。
まとめ
成人のデータになってしまいますが、気管支喘息での抗菌薬の使用率のばらつきを検討しています。ガイドラインではルーチンでの使用は推奨されていませんが、病院間でのばらつきはかなり大きそうですね。