- ワクチン接種後に赤く腫れ上がったり、熱が出るのが怖いです
- あらかじめ解熱薬を使用すると改善しますか?
ワクチン接種後には、痛みが生じたり、熱が出ることがあるため、解熱薬の使用を希望される方もいると思います。
また、あらかじめこういった副反応が起こらないよう「予防的に解熱・鎮痛薬を」と考える方もいるようですが、実際のところ予防効果は本当にあるのでしょうか。
アセトアミノフェンを使用した研究は複数あり、今回は、0歳の小児において、イブプロフェンがワクチン接種後の局所反応の予防に有効か、抗体獲得に影響するかを検討した研究をご紹介します。
- ワクチン接種後の局所反応に対して、解熱薬を予防的に投与することの是非を検討した論文
- 接種4時間後に使用しても、乳幼児の3種混合ワクチン接種においては発熱や局所反応の予防効果はほとんどない
- 抗体の獲得率はほとんど影響しない
Acta Prediatr Scand 77: 747-751, 1988
ワクチン接種直後の解熱薬使用は、抗体獲得に悪影響をもたらす可能性があります。このため、特別な事情がない限り、避けた方が良いと私が考えています。
アセトアミノフェンは、乳児のワクチン接種後の発熱や局所反応を予防するか?抗体獲得に影響するか?
研究の背景/目的
ワクチン接種後の発熱予防におけるアセトアミノフェンの有効性を二重盲検ランダム化で検討した。
研究の方法
ジフテリア・破傷風・百日咳混合ワクチン (DTP) またはDTP不活化ポリオワクチンを接種された健康な生後五か月の乳児を,ワクチン接種の四時間後にプラセボ(130例)またはアセトアミノフェン75 mg (133例)のいずれかに無作為に割り当てた
研究の結果
予防接種後の夕方と翌朝に,両親が乳児の直腸温を測定した。直腸温の平均値は両群で等しく,すなわち,夕方と朝の両方で37.6°Cであった。
その他の軽微な副作用の発現頻度にほとんど差を認められなかった。
ジフテリア・破傷風トキソイドに対する抗体価と百日咳菌に対する抗体価は,プラセボ群(25例)とアセトアミノフェン群(34例)でほとんど差はなかった。
結論
以上より,アセトアミノフェンの単回投与は,ワクチン接種後の発熱などの症状の軽減には効果がないと考えられる。
考察と感想
1985年代にフィンランドで行われた研究のようですね。他の研究との違いがいくつかあり、1つは予防接種直後でなく4時間後に解熱薬を使用したこと、もう1つは単回投与であった点です。
263人が研究対象となり、最終的に治療グループは130人、コントロールグループは133人だったようです。
治療 | コントロール | |
発熱 > 38 | ||
夜間 | 27% | 27% |
早朝 | 29% | 20% |
局所反応 | 46.6% | 56.9% |
啼泣 | 54.1% | 50.8% |
傾眠 | 8.3% | 5.4% |
怯え | 26.7% | 32.8% |
嘔吐 | 2.3% | 3.1% |
下痢 | 5.2% | 3.1% |
けいれん | 0% | 0% |
抗体価 | ||
ジフテリア | 10.7 | 10.5 |
破傷風 | 14.2 | 16.6 |
百日咳 | 34.2 | 31.1 |
発熱の予防という意味では、予防的にアセトアミノフェンを単回だけ飲ませるメリットはあまりなさそうに感じてしまいました。
抗体価にもほとんど影響がないように見えますね。
まとめ
今回は、フィンランドで行われた研究で、ワクチン接種後の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)の使用が、乳幼児において発熱や局所反応などを軽減するか確かめています。
ワクチン接種4時間後後に解熱薬を単回使用しても、発熱などの副反応を予防する効果はほとんどなさそうでした。
一方で、抗体獲得率に対する影響もほとんどないようです。
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