アデノウイルスについて
アデノウイルスは50種類くらいあります。
アデノウイルスには51種類の血清型および52型以降の遺伝型(genotype)があり、A~Gの7種に分類される。
ウイルスの種類によって、生じる症状はことなります。
アデノウイルスの感染経路
アデノウイルスは唾液・鼻水・便などを介して飛沫・接触感染します。
他のウイルスと比較して、感染力が非常に強いのが特徴的です。
感染してから症状がでるまでの期間(潜伏期間)は数日〜1週間です。
アデノウイルス感染症について
アデノウイルスは様々な臓器に感染します(眼・鼻・喉・肺・腸・膀胱など)。
代表的な感染症は;
- 気道感染(かぜ、気管支炎、肺炎)
- プール熱
- 結膜炎
- 胃腸炎
- 膀胱炎
あたりでしょう。
プール熱(咽頭結膜熱)
プール熱は、医学用語では『咽頭結膜熱』といいます。
アデノウイルス3型と7型が、原因ウイルスとして代表的です。
プール熱は夏場に流行します。
罹りやすい年齢は、幼児や小学校低学年の学童です。
プール熱にかかると;
- 高熱(3〜7日)
- のどの痛み
- 目やに/充血
がでます。
アデノウイルスの感染力は強く、出席停止の対象となります。
(学校伝染病の第二種に指定されています)
流行性角結膜炎
流行性角結膜炎はアデノウイルス8型で発症する結膜炎です。
目やに、痒み、目の痛みが出ることがあります。
ひどい場合は、1週間で角膜混濁が生じてしまいます。
学校伝染病の第三種に指定されています。
アデノウイルス胃腸炎
アデノウイルスの胃腸炎は、アデノウイルス31, 40, 41型あたりに感染すると起こります。
ロタウイルスなどウイルス性の胃腸炎は冬場に流行しやすいですが、アデノウイルス胃腸炎は一年を通していつでも起こります。
多くは、咳、鼻水、咽頭痛などの風邪症状が先にあり、その後に下痢・腹痛といった胃腸炎症状が起こります。
出血性膀胱炎
出血性膀胱炎の原因として多いのは、アデノウイルス11型と14型です。
膀胱炎の症状として、血尿、頻尿、排尿時の痛みが出てきます。
大体ですが、1週間〜2週間で軽快します。
アデノウイルス感染症の診断方法
アデノウイルスの診断法は;
- 迅速検査(咽頭ぬぐい液)
- 血液検査
が代表的でしょう。
『1. 迅速検査』を使用するケースがほとんどと思います。
迅速検査は10〜15分程度で結果が出るため、外来で簡便に使用できます。
迅速検査は全てのアデノウイルスを検出できるわけではない
迅速検査は、外来で簡便に行える検査ですが、欠点もあります。
欠点の1つとして、全てのウイルスを検出できない点です。
迅速診断で検出できるのは、
『1〜8型、14型、19型、21型、37型』
のみのアデノウイルスです。
アデノウイルスだけで50種類くらいありますので、全てを検出できるキットではありません。
アデノウイルスの治療
アデノウイルスにかかった場合の対処法をまとめます
特効薬はありませんし、抗生剤は効きません
残念ながら、(重大な基礎疾患のないお子さんの)アデノウイルスに対して外来で使える特効薬はありません。
自分の免疫力でウイルスを攻撃して、ウイルスを対外に排泄するのを待つことになります。
『抗生剤をください』
と希望される保護者もいますが、抗生物質はウイルスには全く効かないし、副作用があるし、耐性菌も作るので、使用しないのが一般的です。
対症療法が治療の基本
特効薬はないので、治療はそれぞれの症状に対して行う『対症療法』がメインになります。
アデノウイルスはしつこいウイルスなので、発熱が長引くことがあります。
このため、こまめな水分摂取をオススメします。
水分摂取ですが、糖分・塩分も同時に摂取できる飲み物が良いでしょう:
熱や喉の痛みは、カロナール・コカールなどの解熱剤を使用しましょう。
解熱剤の効果は一時的ですが、熱が下がり、喉の痛みが和らぐ時間があると、心理的な負担も軽減するでしょう。
感染予防をしましょう
アデノウイルスは感染力が強いので、家族内の感染も注意しましょう。
注意点としては:
- 手荒いを徹底する
- 食事はお皿で共有しない
- 家族内でタオルを共有しない
- 感染者のお風呂・シャワーは最後にする
などで、家族内感染の予防を徹底しましょう。
出席停止について
『咽頭結膜熱(プール熱)』を発症した場合は、出席停止の対象になります。
登園・登校が可能になるのは、『アデノウイルスの症状消失から2日後』です。