今回はアドソルビン®︎(天然ケイ酸アルミニウム)が小児の胃腸炎で有効であるか検討した研究結果をみていきましょう。
国外ではケイ酸アルミニウムとケイ酸マグネシウムの配合物として、「dioctahedral smectite (DS)」として販売されているようです。
2018年にシステマティックレビューとメタ解析が行われ、DSの有効性が評価されています16。システマティックレビューでは生後1ヶ月から18歳までの小児を対象に文献が網羅的に抽出され、最終的に対象研究数18、参加数2616人でした。
前回はアドソルビン®︎(天然ケイ酸アルミニウム)について、一般的な内容をお伝えしています。
研究結果
下痢の期間について
Funnel plot(右図)ですが、おおよそですが左右対称で出版バイアスを明らかに示唆するような結果ではありませんでした。下痢の期間をSmectiteグループとコントロールグループで比較しています。Smectiteを使用したグループのほうが、下痢の期間は24時間ほど短い傾向にありました。
3日後に軽快するか?
治療開始3日後に下痢症状が軽快している可能性も比較しています。Smectiteを使用していると、下痢の症状改善する可能性は、リスク比(RR)にして2.1倍、リスク差 (RD)にして37.6%でした。Number needed to treat (NNT)に換算すると3となります。
入院や点滴について
研究数は少ないですが、入院率や点滴を要する割合を比較しています。行われた研究は1つのみですが、点滴の必要性に関しては、smectiteを使用したグループのほうが割合が、リスク比(RR)にして0.77倍 (95%CI, 0.54 to 1.11)、リスク差(RD)にして-15.3% (95%CI, -36.3% to 5.8%; NNT 7)と、やや低下しています。
一方で、2つの研究結果を統合したメタ解析では、入院率の変化はほとんどありませんでした(上の図)。
副作用:便秘について
最後に副作用である便秘の発症率も比較しています。下痢症の際に止瀉薬を使用すると、下痢はよくなるが便秘となってしまうことがあります。このことをrebound constipationと呼ぶことがあります。これも2つの研究をもとにメタ解析がされています。Smectiteを使用した場合、rebound constipationという副作用が生じる割合は、リスク比にして4.71倍(95%CI, 0.56 to 39.19)、リスク差にして6.1%(95%CI, -0.8% to 13.0%)となります。Number needed to harm (NNH)に関すると17でして、これは17人をsmectiteで治療をすると、1人のrebound constipation患者が増える計算になります。
重篤な副作用について
最後に重篤な副作用に関してですが、対象研究数18+参加数2616で行われた研究では、イレウスや死亡といった症例は認められませんでした。ロペラミドでは1%以下の頻度でこれらの副作用が生じていたため、smectiteのほうがやや安全な印象をうけます。
まとめ
アドソルビン®︎は天然ケイ酸アルミニウムですが、国外ではsmectiteとしてケイ酸アルミニウムとケイ酸マグネシウムの合剤として使用されていました。このsmectiteの有効性、副作用に注目すると、smectiteは…
- 下痢を1日ほど短縮させる
- 3日後に下痢症状が改善する可能性が高まる(NNT 3)
- 点滴治療のリスクを減少させる(NNT 18)
- 入院率は変わらない
- rebound constipationのリスクが上昇する(NNH 17)
- 約2000人規模の調査で、イレウスや死亡例はない
となります。
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