成人においては、慢性ITPにおけるピロリ菌の除菌効果は広く知られているかもしれません。
今回はその最初となる報告をご紹介します。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
胃上皮細胞によって発現されるLewis抗原とピロリ菌との間の交差反応を介して、自己免疫に関与している可能性がある。
H.pyloriに対するモノクローナル抗体は、唾液腺の管細胞や尿細管細胞などの消化外組織と反応する。
ポリクローナル抗H pylori抗体は膜性ニューロパチーにおいて糸球体毛細血管壁と反応している可能性を示唆されている。
さらに、H.pylori除菌後のSchonlein-Henoch紫斑病の治癒も報告されている。
方法
自己免疫性血小板減少症(AT)がH pylori感染と関連し得るかどうかを決定するために、 18名の患者(M, 13;平均年齢45歳[SD 14])を評価した。
ATは、血小板減少症の他の原因が除外された場合に血小板数の減少を伴う血小板に対する自己抗体の存在によって定義された。
患者は血小板数が100 x 10^3/mL以下の時にステロイドを投与された。
H.pylori感染は尿素呼気試験により評価され、アモキシシリン(1000 mg1日2回)、クラリスロマイシン(250 mg1日3回)、およびパントプラゾール(40 mg1日2回)が診断時から7日間投与された。
尿素呼気試験により6週間の治療終了後に除菌を評価し、治療終了後2および4ヵ月後に血小板数および血小板に対する抗体を評価した。
結果
H.pylori感染は11名の患者で認められた。
感染患者と非感染患者の間において、性別の分布は同じであったが、平均年齢は感染患者の方が低かった。
血小板数は、感染者および非感染患者で同様であった(95x vs 103×10^3/L)。
H pylori陽性患者11人のうち8人が治療後に除菌を確認された。
対象患者は、除菌後2, 4か月で血小板数が有意に増加した (図);この8人の患者のうち6人は血小板に対する自己抗体が消失していた。
結論
H.pyloriやその抗原により決定される慢性的な免疫学的刺激が、この現象の背後にある機構である可能性がある。
考察と感想
IgA血管炎(HSP)でピロリ菌を除菌したのを模倣して、ITPでも除菌をしてみた背景は知らなかったですね。
除菌に成功した患者は血小板が増加し、そうでない患者はほとんど変わらなかったという結果のようですね。
まとめ
今回は、成人のITPにおいて、ピロリ菌の感染率と除菌による血小板数増加の割合を調査した最初の研究です。
成人において、ピロリ菌の除菌に成功した場合、血小板数が増加したようですが、失敗した場合はそうでもなかったようです。
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