成人においては、慢性ITPにおけるピロリ菌の除菌効果は広く知られているかもしれません。
今回はその基礎となるシステマティック・レビューとメタ解析の結果になります。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
ITP患者においてHelicobacter pylori(ピロリ菌)感染の根絶が血小板数を増加させることができるかどうかは、いまだ議論の余地がある問題である。
方法
エビデンスに基づくガイダンスを提供するために、 15人以上の全患者を報告する論文を選択し、英語で出版された文献の系統的レビューを行った。
1555人の患者を含む25の研究を同定し、その中の696人は血小板数に対するH.pylori除菌の効果を評価できた。
アウトカムの定義は、
- 完全奏功:血小板数 > 100 x 10^9/L
- 全奏功:血小板数 > 30 x 10^9/L + ベースラインの2倍以上
結果
メタ解析で奏功率の加重平均を示したところ、以下の通りとなった:
推定値 | 95%CI | |
完全奏功 | 42.7% | 31.8〜53.9% |
全奏功 | 50.3% | 41.6〜59.0% |
ベースラインの血小板数が30×10^9́/L未満の患者222人では、完全寛解率は20.1% (95% CI、13.5% -26.7%)、全寛解率は35.2% (95% CI、28.0% -42.4%)であった
H.pylori感染の背景有病率が高い国および血小板減少症が軽度の患者では、奏効率が高い傾向があった。
結論
これらの知見は、典型的なITP患者においてH.pylori感染の検出をし、陽性の場合は除菌を考慮すべきであることを示唆する。
考察と感想
半分くらいは日本の研究でしたね。
ピロリ菌感染者の割合が、40〜90%と(小児より)高い傾向にあったようです。
一方で、この研究に含まれたのはRCTは1つのみで、ケースシリーズばかりです。つまり、ピロリ菌あり→除菌→血小板回復となった割合を、統計学的に統合しただけのメタ解析です。
本文の最後のほうにも、この点は言及されています。つまり、「除菌が有効」とするには、RCTなど対照群との比較した研究が必要です。
まとめ
今回は、成人のITPにおいて、ピロリ菌の感染率と除菌による血小板数増加の割合を調査した研究です。
成人において、ピロリ菌を除菌した場合、血小板数が増加する割合は5割ほどでした。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
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小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
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小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
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