ITPの診断は基本は臨床診断ですが、抗血小板関連抗体の存在は、以前から言われています。
今回は、この検査が診断の一助になるか、感度・特異度の観点から見ています。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
ITPの診断は、免疫性および非免疫性血小板減少症の他の原因の除外に基づく臨床診断のままである。
血小板関連Ig (PAIg) の測定は、免疫性血小板減少症の診断には、感度は高いが、非特異的である。
抗原捕捉アッセイ(モノクローナル抗体による血小板抗原またはMAIPAの固定化を含む)を利用して公表された研究によると、選ばれた患者群において高い感度および特異度(それぞれ70%と80%)が報告されている。
方法
180人の血小板減少症の患者を対象に、シドニーで研究が行われた。48時間以上の間隔をあけて、血小板数が140 x 10^9/L未満が対象となった。
骨髄検査を受けていなかったり、事前に治療を受けている場合は除外とした。
その結果、
- 免疫性:80人
- 非免疫性:50人
が対象となった。
診断は、
- ITP
- SLEによる免疫性血小板減少
- 薬剤性の血小板減少
- リンパ球増殖性の疾患による血小板減少
- 腫瘍疾患による血小板減少
などである。
抗血小板抗体は、
- PAIgGの測定:2つ
- ELISA法
- CELIA (competitive enzyme-linked assay)
- MAIPA (MoAb immobilization of platlet antigen)
などが使用された。
結果
あらゆる原因で生じた血小板減少症の158人の患者の前向き評価では、直接MAIPA分析は感度51%と特異度80%が報告された。
MAIPAは、 2つのPAIgGアッセイよりも免疫性血小板減少症と非免疫性血小板減少症の識別においてかなり優れていた。
MAIPAによって検出された抗血小板抗体は、 GP Ib/IX複合体よりも糖蛋白質 (GP) IIb/IIIaに対してより高頻度に向けられていた。
免疫性および非免疫性血小板減少症患者の両方に対して、 4つのアッセイはすべて同様の結果を示した。
結論
著者らの経験は、 MAIPA分析が血小板減少症のラボ評価に有用であり、治療前に実施されるべきである。
「非免疫の 」血小板減少症の一部の患者は真の抗血小板抗体を有する可能性があることを示唆する。
考察と感想
それぞれの感度、特異度も本文中には記載されていました:
感度 | 特異度 | |
MAIPA direct |
49% | 78% |
indirect | 25% | 96% |
CELIA | 74% | 26% |
ELIZA | 34% | 77% |
まとめ
今回は、免疫性の血小板減少において、血小板関連抗体の感度・特異度を、異なるアッセイで見ています。
従来の方法と異なり、MAIPAという方法は、感度は低く、特異度は高い結果だったようです。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/21 02:10:50時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています