科学的根拠のある子育て・育児

乳幼児が下痢の時、ミルクのみにすべきか、食事を再開すべきか?[ベネズエラ編]

  •  下痢の時、ミルクだけにしましょう
  •  食事はもう少し待ってから

という指示もあるようです。

今回は、この方針に科学的根拠があるか検討した論文を解説してみようと思います。

胃腸炎で脱水を補正した後、あえてミルクのみ vs. 食事を再開に分けて、下痢の期間などを比較しています。

先に結論とポイントから述べましょう。

ポイント

  •  乳児が下痢の時、ミルクを再開するか、食事を再開するか必検討
  •  食事再開のほうが、下痢の量と期間は短い傾向にあった
マミー
マミー
下痢のとき、ミルクのみにすべきですか?離乳食を再開してもよいですか?

Dr.KID
Dr.KID
過去の論文を見て、一緒に考えていきましょう。

基本的に、胃腸炎のとき、飲める状況であれば、ミルクや母乳をやめて、経口補水液にする必要はありません。

 研究の概要

今回は、小児の下痢において、ミルクを再開すべきか、食事を再開すべきか検討した研究になります。

1984年にベネズエラから報告されたランダム化比較試験になります。

 対象患者

対象となったのは、

  •  胃腸炎
  •  3〜14ヶ月

小児が対象です。

治療

治療は、脱水補正を4時間かけてした後に、以下のような方針にしています。

  1.  ミルクをすぐに再開
  2.  離乳食を再開

のいずれかをランダムに割り当てています。

離乳食としては、鶏肉、ココナッツオイル、果物が中心でした。

研究結果

最終的に56人が参加しています。

背景は以下の通りでした:

再開 ミルク
N = 26
離乳食
N = 30
下痢の量
g/kg
318.63
(37.31)
230
(30.73)
下痢の期間 75.53時間
(9.73)
55.59時間
(8.92)
体重増加 3.39%
(0.75)
2.19%
(0.55)

離乳食のほうが、下痢の量・期間はやや短い印象ですね。食べれるなら食べた方がよいデータです。

 感想と考察

今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、食事を再開できる状況なら、再開してよさそうな印象ですね。むしろ、ミルクのみに制限すると、かえって下痢の期間が長引きそうです。

Dr.KID
Dr.KID
同じような研究がたくさん行われています。

まとめ

今回は、乳児の下痢に対して、ミルクのみにするか、食事を再開するかを検討しています。

ミルクのみに制限すると、下痢の量・期間が長くなる印象です。

類似の研究は多数出ているので、今後も報告していければと思います。

Dr. KIDの書籍(医学書)

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

 

新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/11/21 01:10:36時点 Amazon調べ-詳細)

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。