乳幼児の胃腸炎と食事再開のタイミングについて、様々な意見があるようです。
確かに乳幼児が嘔吐を繰り返している状況であれば、食事は無理に再開せず、まず水分摂取を試みるのが良いでしょう。
しかし、嘔吐がなく、下痢の状態だけであれば、基本的に食事は無理に制限しなくて良いと考えられており、その根拠を今回お示ししようと思います。
- 小児の胃腸炎において、食事再開のタイミングを検討したRCTです
- 食事再開を制限しても、下痢の量は減らず、むしろ体重増加が遅れる傾向にありました
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研究の概要
今回はイギリスから報告されたランダム化比較試験です。
対象となったのは、3歳未満の小児の胃腸炎で、7日以内の下痢症状です。
治療
治療は、
- 最初の1−2日は食事制限をし、水分のみを取らせる
- 早期から食事を再開する
のいずれかをランダムに割り当てています。
結果
最終的に、水分のみが33人、食事の早期再開が27人でした。下痢の期間と体重の変化は以下の通りでした:
水分のみ | 早期再開 | 差 | |
下痢の期間, 中央値 |
66.5 (11.0〜192.0) |
56.0 (24.0〜216.0) |
-8.0 (-24.0〜8.0) |
体重の変化率, 中央値 |
+0.005 (ー9.90〜+7.27) |
+0.96% (-3.97〜16.66) |
+0.82% (-0.86〜2.56) |
食事を制限して水分のみにしても、下痢の期間は短縮するわけではなさそうです。
体重の変化に関しては、早期に食事を再開した方が、増加は良さそうな印象のあるデータです。
まとめ
今回の研究では、乳幼児の下痢に対して食事再開のタイミングを検討したRCTです。
嘔吐がひどくなければ、食事再開を遅らせるメリットはほとんどなさそうで、下痢の量も変わりませんでした。
- 小児の胃腸炎において、食事再開のタイミングを検討したRCTです
- 食事再開を制限しても、下痢の量は減らず、むしろ体重増加が遅れる傾向にありました
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