まずは天然ケイ酸アルミニウム(アドソルビン®︎)がどのようなお薬かを説明しましょう。
天然ケイ酸アルミニウムは、消化管内の物質、過剰な水分・粘液などを吸着し、除去することで、下痢を軽快させる薬です。
アルミニウムを含む製剤なので、透析中や腎不全のある患者では使用禁忌であるのと、キノロンやテトラサイクリンなどと相互作用がある点に注意が必要です。
また、腸閉塞のある患者や血便を伴うような下痢(腸管出血性大腸菌や赤痢など)には症状を悪化させるおそれがあるため使用すべきではありません。
天然ケイ酸アルミニウムの処方薬と市販薬
天然ケイ酸アルミニウムを含有する処方薬はアドソルビン原末®︎です。
市販薬では、スメクタテスミン®︎(11歳以上から使用可能)があります。
また滑石(カッセキ)という漢方薬もあり、これは天然ケイ酸アルミニウムと二酸化ケイ素からなる鉱物のようです。
国内での研究について
小児において有効性を検討したとされる研究が1920年代に2つ報告されています。こちらの2つの報告によると、研究に参加した6例および1例が天然ケイ酸ナトリウムを内服したところ、下痢が軽快したため有効であったと判断されたようです。
ですが、これらの報告は「使った、治った、効いた」の「3た論法で」あり、単なる胃腸炎の自然経過である可能性もあるため、有効性を証明したことにはなりません。有効性を検討するには、コントロール(天然ケイ酸アルミニウムを使用しない)グループを設定する必要があります。
- 湯川蜻洋:治療薬報1928;(299・300):7-9
- 弘瀬良廣:治療薬報1927;(270):9-14
国外での研究と推奨について
国外ではケイ酸アルミニウムとケイ酸マグネシウムの配合物として、「dioctahedral smectite (DS)」として販売されているようです。Dioctahedralは2八面体を、Smectiteは粘土鉱物を意味します。DSの評価はロペラミドほど悪くはなく、下痢の期間を短縮させ、重篤な副作用の頻度も低いため、小児の急性胃腸炎では使用に関して弱い推奨(weak recommendation)がされていることもあるようです1
次回は、このあたりのシステマティックレビューとメタ解析などの結果をご紹介できればと思います。
参考文献
- Emerg. Med. J.23, 65–66 (2006).