小児科

こちらでステロイド外用薬の疑問にお答えします

『子供にステロイドの塗り薬を使って大丈夫でしょうか?』
『ステロイドを使うと怖い副作用がでるのでしょうか?』

と保護者の方からよく質問されます。
おそらく、ステロイドに関して様々な情報が溢れているのが原因でしょう。

Dr.KID
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色々と誤解されてしまっているステロイド外用薬

ステロイドに悪いイメージが蔓延している理由

ステロイドに対して悪いイメージが広がったのは、一部の週刊誌・テレビが『ステロイド・バッシング』を繰り広げた時期があったからです。
ですが、一部の報道機関が行った『ステロイド・バッシング』には全くといっていいほど科学的根拠がありません。

Dr.KID
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ネガティブな報道は、その後も負の影響を残すことがあります。

 どんな薬も正しく使うことが重要

当たり前のことなのですが、全ての薬には副作用があるので、正しく使うことが重要です。

ステロイド外用薬(塗り薬)も正しく使えば、アトピー性皮膚炎や湿疹の治療をできますし、副作用も最小限に留めることができます。

Dr.KID
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100%安全な薬はありません。しかし、正しく使うことで、本来は不要なリスクを下げられます。

ステロイドってそもそも何ですか?

ステロイドは、「副腎」という内蔵が作り出し、血中に分泌しているホルモンです。
ホルモンは体中の臓器に様々な指示をだしますが、ステロイドホルモンは炎症をおさえる働きがあります。
ステロイドにある炎症を抑制する力を利用して、様々な疾患の治療薬として使用されています。

 

Dr.KID
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ステロイドホルモンの正体

 ステロイド外用薬がアトピー性皮膚炎に効く理由

ステロイド外用薬は、アトピー性皮膚炎で起こっている皮膚の湿疹・炎症を効率よく抑えてくれます。
アトピー性皮膚炎では、皮膚にIgE抗体や好酸球が皮膚に集まって、様々な物質が放出され炎症が起きています。

ステロイドは好酸球の働きを抑えてくれ、さらに皮膚の炎症を改善させてくれるため、アトピー性皮膚炎に有効なのです。

 

 ステロイド恐怖症の根源

ステロイドが使用できるようになったのは30〜40年ほど前です。
ステロイドを使用すると肌がびっくりするほどツルツル・スベスベになるので、化粧品に使われることすらありました。

当時は、あまり副作用のことが知られておらず、過剰投与や長期間の投与がされていました。
このため、骨訴訟症・糖尿病・肥満など様々な副作用が起こりました。

 副作用はステロイドの量・強さ・使用期間に依存します

ステロイドを使用したら必ず副作用が出るわけでなく;

  • ステロイドの量が多い
  • ステロイドの強さが強い
  • ステロイドを長期間に使用

などの場合に副作用が起こりやすくなります。

つまり、ステロイドは正しく使われなければ、副作用が起きてしまうのです。

 ステロイドの外用薬は副作用は起こりづらいです

アトピー性皮膚炎に使用する外用薬(塗り薬)には、ステロイドの量はかなり少量しか含まれていません。

内服薬(飲み薬)のように、副作用が全身に広がってしまうことは、まずないと思います。
医師の指導どおりに、決められた分量を使っている限りは、問題ないことがほとんどです。

Dr.KID
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飲み薬と塗り薬では、使用するステロイドの量がかなり異なります。

ステロイド外用薬でよくある質問にお答えしてみます

ステロイド外用薬は正しく使えば副作用を最小限に抑えられますが、どうしても負のイメージが先行してしまい、恐怖感がぬぐえない患者さんが沢山います。
ここからは、私がよく患者さんから受ける質問に、1つ1つお答えしていきます。

 Q1: ステロイド外用薬を使用すると、やめられなくなる?

これは、とてもよく質問されますが、答えは『×』です。
ステロイド外用薬は正しく使用すれば皮膚の症状が改善しますし、皮膚の状態が安定してきたら外用薬を塗る回数を減らして、最後には終了できます。

外用薬は患者さんの皮膚の症状に合わせて

  • ステロイド外用薬を使用するか
  • ステロイド外用薬の強さ、回数、期間

を決めます。

皮膚の症状が軽ければ、すぐにやめることが出来る場合もたくさんあります。
一方で、湿疹の状態がひどければ、長期にわたってステロイド外用薬を使用する場合もあります。

 長期間使用するときに注意していること

ステロイド外用薬は使用量の減らし方が重要です。
湿疹はステロイド外用薬を使えば改善しますので、よくなってきたら使用量を徐々に減らしたり、ステロイドの強さを弱くしたりして、副作用が最小限に抑えられるように配慮しています。

Dr.KID
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上手く使いこなすことが重要。

Q2:ステロイド外用剤を中止するとリバウンドが起こる?

こちらの質問も、答えは『×』です。
まずは『リバウンド』の意味から確認していきましょう。

 『リバウンド』の意味、勘違いしてませんか?

アトピー性皮膚炎の湿疹は、ステロイド外用薬を開始すると、比較的すみやかに皮膚の赤みが落ち着いてきます。
しかし、一見すると症状が落ち着いているようにみえても、皮膚の炎症は深い場所では続いています。
自己判断でステロイド外用薬を中止すると、皮膚の深い場所に残っていた炎症は、再び勢いを増して、再び湿疹や皮膚炎が起こります。

このことを『リバウンド』と勘違いして呼んでいる方いますが、全くの間違いです。
単に、ステロイド外用薬の減らし方、終了の仕方が不適切なだけです。

 『リバウンド』の正しい意味は?

ステロイドの飲み薬や注射で治療を続けていて、突然、ステロイドを中止すると、もともとの病気の症状以外に、強い全身症状があらわれることを、ステロイドの「リバウンド」をいいます。

外用薬では、強い全身症状がでることは、まずありませんから、リバウンドが起こるリスクは限りなく低いでしょう。

Dr.KID
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「リバウンド」という言葉だけが先行している気が…

 Q3:ステロイド外用薬で骨がボロボロになる?

こちらも答えは『×』です。

ステロイド内服薬を3週間以上飲み続けると、体内のステロイドの量が多くなります。
ステロイドは骨を脆くしますので、長期間のみ続けると、骨が脆くなり、骨粗鬆症になることはあります。

一方、ステロイド外用剤は、皮膚だけに効くように作られ、全身への影響を極力減らしています。

通常の使用量では、体内に入るステロイドの量は微量ですから、ステロイド外用剤の使用によって、骨に悪い影響を与えることはほとんどないでしょう。

塗り薬のステロイドで骨に影響がでることは、ほとんどありません。

Dr.KID
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飲み薬と塗り薬では、出る副作用が異なります。

Q4:ステロイド外用薬は、ニキビ・おできができやすくなる?

こちらの答えは『○』です。

ステロイドは免疫細胞の働きを低下させることで、炎症を抑える作用があります。
このため、塗り薬を使った部分の免疫力が低下し、雑菌が繁殖しやすくなるため、ニキビやおできが出来やすくなります。

湿疹は皮膚がガサガサして痒い状態ですが、ニキビ・おできは赤く腫れた状態になります。
「皮膚の状態がおかしいな?」と思ったら、早めに医師に相談しましょう。
塗り薬を変更し、適切に治療をすれば、短期間で治すことができます。

Q5:ステロイド外用剤を使用すると、皮膚の色が黒くなる?

こちらの答えは『×』です。

ステロイドを使用したから皮膚が黒くなるのではありません。
皮膚の炎症が治まった後に、一時的に黒くなっているだけのことがほとんどで、時間が経てば薄くなります。

皆さんは、日焼けの後に肌が黒くなった経験はあるでしょう。
これは、皮膚に炎症がおこり、色素が残り、肌が黒くなったといえます。

ステロイド外用剤を塗った後に、色が黒くなったように感じるのは、これまでずっと続いていた皮膚の炎症がおさまり、色素が目立ってしまうためです。
日焼けと同様に、この色素は時間とともに薄くなっていきます。

 

Q6:ステロイド外用剤は皮膚に蓄積する?

『×』です。 ステロイド外用剤が皮膚に蓄積することはありません。
もし蓄積するならば、ステロイド外用剤を中止してもしばらく効果は持続するはずです。
しかし、実際に中止すると、症状が悪化することから、皮膚にステロイドが蓄積していないことがわかります。

Q7:ステロイド外用剤を長期間使用すると、皮膚が薄くなる?

答えは『○」です。
しかし、医師の指示を守って使えば、悪化を避けることもできます。

顔はステロイド軟膏の吸収がよいので、長期にわたって強いステロイド外用剤を使用しつづけると、皮膚がうすくなったり、血管が浮いたりすることがあります。
このため、1段階ほど弱いステロイドを使うことが多いです。

またステロイドを使用すると、皮膚の毛細血管が収縮するため、皮膚が白っぽくなることもあります

これらの副作用は、ステロイドを塗るのをやめて1ヶ月ほどで元に戻ります。
自己判断で漫然とステロイド外用薬を使い続けないように気をつけましょう。

Q8:ステロイド外用薬で成長障害は起こる?

こちらの答えは『×』です。

ステロイドで成長障害が起こるのは、乳幼児に内服や注射でステロイドを長期間にわたり使用した場合に限られます。
ステロイド外用が体内に入っている量はごくわずかですので、成長障害の心配はほとんどありません。

Q9:ステロイド外用剤を使うと白内障になる?

答えは『×』です。
実は、アトピー性皮膚炎で白内障になりやすいことは昔から報告されています。
アトピー性皮膚炎は眼の周りにも湿疹が出るため、眼の痒みから強く擦ってしまい、外傷性にできる白内障と考えられています。

 

寝ているとき、あまりの痒さに目をバチバチとたたいてしまい、この振動が網膜剥離の原因になることもあります。

ステロイド外用剤が発売される前から、アトピー性皮膚炎の患者に白内障・網膜剥離の頻度が高いことは知られており、ステロイド外用薬が原因とは考えていません。

但し、外用薬は眼の中に入らないように注意は必要です。

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原因と結果の順番をきちんと考える必要があります。

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ABOUT ME
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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。