今回は市販薬でよく使用されている抗ヒスタミン薬と充血除去薬のコンビネーションですが、このタイプの薬がかぜの症状に対する有効性を確認した文献を見つけましたので、こちらでご紹介させていただきます。
国内の小児の市販薬の大半に抗ヒスタミン薬と充血除去薬が入っています。
成分としては、以下のものが多いです:
抗ヒスタミン薬 | 充血除去薬 |
ジフェンヒドラミン | メチルエフェドリン |
クロルフェニラミン |
1990年代のアメリカでもどうやら状況は同じようで、さらにかぜの市販薬として20億ドル(2000億円:1ドル=100円)が使用されているようです。
アメリカのとある研究では、40%ほどの小児が過去1ヶ月以内にかぜの市販薬を使用していたと報告されています。
-
Kogan MD, Pappas G, Yu SM, Kotelchuck M. Over-the- counter medication use among U.S. preschool-age children. JAMA 1994;272:1025-30.
私の方でもいくつか紹介してきましたが、過去に抗ヒスタミン薬と充血除去剤が小児の風邪症状に有効であるか検討しています。
しかし、これらの研究ではどちらかというと薬を使用して24〜72時間後の症状改善を見ており、薬の即効性という観点かの評価はされていませんでした。
そこで、今回の研究は市販薬の風邪薬で使用される抗ヒスタミン薬や充血除去薬のコンビの有効性を検討しています。
研究の方法
今回の研究は1995〜1996年にアメリカのシアトルで行われました。対象となったのは、
- 生後6ヶ月〜5歳
- 風邪の症状が7日以内
- 喘息やアレルギーがない
- 内服している薬がない
になります。二重盲検化をし、ランダムに
- 抗ヒスタミン薬・充血除去剤
- プラセボ
の2つのグループに分けています。
抗ヒスタミン薬はブロムフェニラミン、充血除去薬としてフェニルプロパノールアミンが使用されています。
アウトカムの評価
研究のアウトカムは、
- 鼻水
- 鼻づまり
- 咳
の3項目を7段階のリッカート尺度(7-point Likert scale)で評価しています。
さらに内服後に睡眠しているかもチェックしています。
それぞれの評価は最初の受診から48時間以内、なおかつ薬を飲んだ2時間後にされました。
研究結果と考察
研究参加者と有効性の評価の回数は以下の通りになります。
治療あり | プラセボ | |
回答者数 | 28人 | 31人 |
回答数 | 90回 | 85回 |
内服後の症状の割合について
(論文より拝借)
アウトカムですが、鼻水、鼻閉、咳においては抗ヒスタミン・充血除去薬を使用したグループとプラセボグループでは統計学的な有意差はありませんでした。
内服後の睡眠に関しては、抗ヒスタミン・充血除去薬を使用したグループの方が眠りに落ちてしまっているようです。
内服後の症状のリッカート尺度について
内服後のリッカート尺度の結果は以下の通りになります(テーブルは原著より拝借)
リッカート尺度は高いほど症状が軽快していることが示唆されます。
今回の研究では抗ヒスタミン・充血除去薬を使用しても、プラセボと比較してかぜの症状は軽快しませんでした。
考察と感想
1990年代の論文ですが、アウトカムの繰り返し計測にもきっちり対処していますし、論文も非常にわかりやすく記載されていました。
「かぜ薬」として市販薬にもよく入っている抗ヒスタミン・充血除去薬のコンビですが、今回の研究では即時効果も認めておりませんでした。
過去の研究を加味しても、風邪で内服するメリットがなさそうな印象を受けています。
まとめ
市販の風邪薬にもよく入っている抗ヒスタミン・充血除去薬ですが、小児のかぜ症状を軽快させる効果はなさそうという結果でした。
反面、抗ヒスタミン薬は眠気などの副作用もあるため、注意が必要といえます。
特に日中に飲ませると、活動すべき時間いふらついてしまったり、眠ってしまう可能性もあります。