小児の発熱の際に使用する薬といえば、アセトアミノフェン(カロナール®︎やコカール®︎)がファーストチョイスのことが多いです。
一般的にアセトアミノフェンというと、NSAIDsより弱い解熱効果であるが、用量・用法を守っていれば安全性は高いと考えられています。
とはいえ、小児にNSAIDsを全く使用しないわけではありません。
例えば、川崎病にアスピリンを使用することがありますし、若年性特発性関節炎(JIA)にイブプロフェンやナプロキセンを使用することもあります。
しかし、これらの解熱効果の序列について、実際に小児で行われた研究は多くはありません。
今回はNSAIDs(インドメタシン)・アセトアミノフェン・プラセボ(偽薬)の3剤を比較した研究をみつけましたので、そちらを報告させていただきます。
Brewer EJ Jr. A comparative evaluation of indomethacin, acetaminophen and placebo as antipyretic agents in children. Arthritis Rheum. 1968;11:645-51.
研究の方法
アメリカのテキサスで14歳以下の発熱した小児を対象にランダム化比較試験が行われました。
熱源は急性上気道炎など、小児科外来でよく遭遇する疾患に限定しています。
参加した患者に、
- インドメタシン
- アセトアミノフェン
- プラセボ
のいずれかを使用して、30分毎に3時間ほど体温を計測しています。
研究の結果と考察
合計で223人の患者が研究に参加しています。内訳と薬剤投与前の平均体温は以下のとおりとなります。
薬 | 人数 | 体温 |
インドメタシン | 76 | 39.2℃ |
アセトアミノフェン | 72 | 39.6℃ |
プラセボ | 75 | 39.2℃ |
となっています。
発熱の原因疾患は以下のとおりです(論文より拝借):
解熱効果の比較
3剤の解熱効果の比較をみてみましょう。
この数字は最初から体温がどれだけ下がったをみています。
プラセボ群では0.5℃前後さがっていますが、インドメタシングループは3℃、アセトアミノフェンは2.5℃ほど低下しています。
表で数字を追いかけるのは直感的ではないため、グラフにしてみました。
灰色がプラセボ、茶色はアセトアミノフェン、黒がNSAIDs(インドメタシン)になります。
アセトアミノフェンの解熱効果はプラセボよりは強く、NSAIDsよりは少し弱いという結果でした。
考察と感想
今回の結果は、解熱効果としてはNSAIDs > アセトアミノフェン >> プラセボという結果でした。ある意味予想通りの結果が綺麗にでたといえます。
解熱効果が強いほうがいいんじゃないのか?と思われる方がいるかもしれませんが、必ずしも重要ではありません。
今回の結果でも、アセトアミノフェンはNSAIDsよりやや弱いものの、プラセボよりはるかに下がっているので、安全性を考えるとアセトアミノフェンを選択する小児科医がほとんどでしょう。
また、体温を薬で下げることがゴールではなく、薬を使うことで、発熱に伴う不快感やのどの痛みなどを軽快させてあげることが目的です。
医療者側も、かぜの発熱などで、熱のアップダウンに一喜一憂しすぎないという点も重要でしょう。
まとめ
今回の研究では、かぜなど小児でよくみる疾患による発熱では、NSAIDs > アセトアミノフェン >> プラセボという結果でした。
解熱効果だけを目的にせず、安全性や副作用などと天秤をかけながら薬の選択をしていきたいところです。