- 下痢の時は腸を休めましょう
という医療者からの指導があるようです。
つまり、小児が胃腸炎で下痢がある場合、腸が荒れているから、食事は無理に取らず、経口補水液などで無理をせずに必要な水分や塩分、糖分を摂取しましょうという発想のようです。
意外に思われるかもしれませんが、胃腸炎による下痢の時に、無理に食事制限や母乳・ミルクの制限をする必要はないと、過去のデータは述べています。むしろ、食事を制限して、水分のみで過ごすと、かえって下痢の期間が長引くというデータすらあります。
今回は、そのエビデンスを見ていきましょう。
- 乳児を対象とした研究
- 胃腸炎の下痢のとき、ミルクや母乳の再開タイミングを検討
- 飲める状況なら、特別に遅らせる必要はなさそう
乳幼児が胃腸炎の時、母乳やミルクをやめるべきか、は小児科外来でよくある質問です。
基本的に、本人が飲める状況でしたら、無理にやめる必要はありません。
ミルクや母乳をやめて、経口補水液に切り替えると、かえって下痢が長引くことがあります。— Dr. KID (@Dr_KID_) March 12, 2020
小児の下痢のときに
- 腸をやすめてください
といった指示もあるようです。ですが、これらの指示はほとんどが科学的根拠がありません。
嘔吐がひどくなく、飲食可能である状況なら、食事や飲み物、母乳や人工乳に特別な変更は必要ないと私は考えています。
研究の概要
今回は、アメリカで行われたランダム化比較試験(RCT)をご紹介します。
対象患者
今回のRCTは90人を対象に行われました。対象となったのは、
- 0〜12ヶ月
- 下痢の回数 > 4/日
のある入院した乳児が対象です。
治療
治療は、経口補水液または点滴によるを脱水の補正を行ったのちに、ランダムに
- 豆乳でできた人工乳(乳糖フリー)
- 48時間は経口補水液のみ
で行い、下痢の量と期間を比較しています。
研究結果
結果は以下の通りでした:
再開 | すぐ再開 | 48時間後 |
N | 43 | 44 |
下痢の量, ml/kg (SD) |
121 (129) |
299 (319) |
期間, 時間 (SD) |
54 (28) |
93 (56) |
飲める状況で荒れば、むしろ人工乳を飲んだ方が成績は良かったです。つまり、「腸を休ませる」ために経口補水液だけの摂取にすると、かえって下痢の量は増え、下痢の期間も長引くようです。
感想と考察
今回の研究結果では、乳児が対象ですが、胃腸炎による下痢のときに、特別、ミルクや母乳の再開を遅らせる必要はなさそうです。
時に、「腸を休ませるために、ミルクや母乳は一旦中止」「ミルクを薄めてください」といった指示をしている医師もいるようですが、過去のデータをみるかぎり、あまりメリットはなく、むしろ下痢が長引く、かえって下痢の量が増える、体重の回復が遅れるという報告が複数あります。
まとめ
今回は、乳児を対象に行われたRCTで、下痢のときに経口補水液の投与のみに制限すべきか、検討しています。
経口補水液にすると、かえって下痢が長引き、下痢の量も増える結果でした。
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