今回は滲出性中耳炎の手術後に、抗ヒスタミン薬など内服薬を使用した場合に有効性があるか否かを検討しています。
これまでの研究を簡単に振り返ると
- 滲出性中耳炎の初期(3ヶ月以内)
- 滲出性中耳炎の長期(1年ほど)
に抗ヒスタミン薬を使用してみても、どうも有効性がなさそうという結果でした。
滲出性中耳炎の治療では、自然軽快するのをゆっくりと待つ、内服薬を使用する(抗菌薬、充血除去薬、ステロイドなど)、中長期的に軽快せず聴力低下や学習への影響が懸念される場合に手術するなど、様々な選択肢があります。
鼓膜を切開したり、換気用のチューブを入れたりする外科的処置は侵襲を伴うので最終的な手段になりますが、外科的処置後にもなんとか再発率を減らしたいと考えるのも自然なことでしょう。
今回は、両側性の滲出性中耳炎に対する外科的処置の後に、抗ヒスタミン薬など内服薬を追加することで再発率が変化するかを検討しています。
Lesser THJ, et al. Efficacy of medical treatment as an adjunct to surgery in the treatment of secretory otitis media. J Laryngol Otol. 1986;100:1347-50.
研究の方法
今回のランダム化比較試験は1984-85年にイギリスで行われました。
- 両側性の滲出性中耳炎で手術適応あり
- 過去に耳鼻科系の手術歴なし
- 3.5〜12歳
の小児が対象となっています。治療は、
- 抗ヒスタミン薬 + 充血除去薬
- カルボシステイン(去痰薬)
- プラセボ(偽薬)
の3つのうちいずれかをランダムに割り付けています。
(*抗ヒスタミン薬 = brompheniramine, 充血除去薬 = phenylephrine + phenylpropanolamine)
治療は6週間行われ、臨床的なアウトカムと副作用を確認しています。
研究のアウトカムについて
アウトカムは鼓膜の所見、ティンパノメトリー、聴力検査などを行なっています。
詳細なスコアは以下の通りになります(原著より拝借)。
このスコアを足し算して5点以上は「滲出液がある」と判断されています。
研究結果と考察
38人(76の耳)が研究対象となりましたが、2名が途中で追跡不能となりました。残りの36人(72の耳)で研究が行われています。
アウトカムについて
上のテーブルが結果となります。正常と判断された耳の割合を見ています。
カルボシステインを使ったグループの方が、抗ヒスタミン薬やプラセボグループよりやや治癒率が高く見えます。
しかし、統計学的な有意差はなかったようです(P = 0.06; Fihser’s test)。
実はこの解析には問題点があります。
耳の数を分母にしていますが、1人あたり2つ耳があるため、個人ごとの相関を解析で考慮する必要があります。
とある人の右耳が治っていれば、左耳も治っている傾向が高いと思います。
逆に片方の耳が治っていなければ、反対側も完治していない可能性が高いと予測できます。
それぞれの耳が独立していないため、解析段階で対処する必要があります。
まとめ
今回の研究結果を見ると、少なくとも滲出性中耳炎の外科処置後に抗ヒスタミン薬を使用しても、あまりメリットはなさそうな結果と言えます。
著者らは以下のように述べています;
確かに今回のデータではカルボシステインを使用する有益性はありますが、やや解析手法に難があります。
統計学的な有意差も確認できておらず、他の研究結果を参考にしながら判断した方が良いと思います。