オハイオ州ホームズ郡には、世界でも大きなアーミッシュのコミュニティが存在している。アーミッシュの間での低い予防接種率は以前から知られており、多くの研究がこれの原因を探ってきた。
従来、アクセスの問題が主な要因とされてきたが、実際のところ、親の予防接種に対する恐れや誤解が更なる大きな障壁となっている可能性がある。
この研究では、オハイオ州のアーミッシュコミュニティにおける未接種の背景を深く探り、医療へのアクセスと親の恐れのどちらが大きな要因であるのかを明らかにする。
Wenger OK, McManus MD, Bower JR, Langkamp DL. Underimmunization in Ohio’s Amish: parental fears are a greater obstacle than access to care. Pediatrics. 2011 Jul;128(1):79-85. doi: 10.1542/peds.2009-2599. Epub 2011 Jun 27. PMID: 21708796.
オハイオ州アーミッシュのワクチン未接種:医療へのアクセスよりも親の恐れが大きな障壁
研究の背景/目的
オハイオ州ホームズ郡は、世界で最も大きなアーミッシュのコミュニティの一つであり、持続的に低い予防接種率を示している。
他のアーミッシュのコミュニティの研究で、子供に予防接種をさせない理由として、予防接種へのアクセスの不足が挙げられている。本研究は、未調査であったホームズ郡のアーミッシュの親が予防接種を受けない理由を探求した。
研究の方法
2007年1月に、ホームズ郡のアーミッシュの親1000人を対象とし、予防接種に関する態度を評価するためのアンケートが無作為に郵送された。
研究の結果
親の37%が回答した。359人の回答者の中で、68%が自分の子供全員が少なくとも1回の予防接種を受けたと述べ、17%が一部の子供が少なくとも1回の予防接種を受けたと報告した。
親の14%のみが、子供が予防接種を受けていないと報告した。
ワクチンから子供を完全に免除した親の86%は、子供にワクチンを接種しない主な理由として、副作用への懸念があると述べた。
多くの親は、特定のワクチンの製造方法に関する懸念から、子供に一部のワクチンのみを接種することを許可していると指摘した。
結論
アーミッシュの親が予防接種を拒否する理由は、非アーミッシュの親が予防接種を拒否する理由と同様である。
アメリカの閉鎖的な宗教コミュニティでも、ワクチン接種の主要な障壁はワクチンの副作用への懸念である。
調査対象のアーミッシュの親の85%が何らかの予防接種を受け入れている場合、彼らは予防ケアを受け入れる可能性のある変動的なグループであると言える。
アーミッシュの人口における未接種の問題は、ワクチンへのアクセスを確保するとともに、ワクチンに対する親の認識を変えることに重点を置いて取り組む必要がある。
考察と感想
オハイオ州ホームズ郡のアーミッシュコミュニティにおける未接種の問題は、単なる医療へのアクセスの問題を超えた深い背景があることが示唆されている。研究結果から、親の予防接種に対する恐れや懸念が、実際の接種率の低さの主要な要因であることが強く示された。これは、情報の伝達や教育の方法、そしてコミュニティ内での信念や価値観が、医療の取得よりも大きな影響を持っていることを示している。
アーミッシュのコミュニティは、他の社会から比較的隔絶された独自の文化や信念を持つ集団であるため、一般的な啓発活動やキャンペーンのアプローチが効果を発揮しにくい可能性がある。このような背景から、アーミッシュのコミュニティ特有の懸念や疑念を取り払うための対話や啓発が必要であると考えられる。
また、アーミッシュだけでなく、一般社会においてもワクチンに対する懸念や誤解は存在している。この研究は、そのような背景や要因を理解し、具体的な対策やアプローチを考える上での重要な示唆を与えている。予防接種の受け入れを促進するためには、科学的な知識だけでなく、文化や信念、コミュニティの特性を考慮したアプローチが求められるであろう。
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