抗ヒスタミン薬が小児のかぜ症状(咳、鼻水、倦怠感)に有効か否かを確認したく検索したところ、以下の文献をみつけることができました。
研究結果を読む前に
今回の研究ですが、フランス語で記載された文献で、原著たどり着くのが困難でした。
このため、コクランデータベースのシステマティックレビューとメタ解析から可能な限りに情報を収集して記載しています。
こちらの研究ではアステミゾールという抗ヒスタミン薬を小児に投与して有効性を評価しています。
あまり聞きなれない薬の名前と思い検索したところ、どうやら不整脈の誘発など安全上の理由で発売中止となっているようです(参照)。
とはいえ、数少ない小児のかぜ薬の研究ですので、確認はしておきましょう。
研究の方法
今回の研究はスイスで行われ、
- 2~15歳
- かぜ症状がある(鼻汁、咳、倦怠感)
を対象に行われています。(おそらくですが…)ランダム化比較試験(RCT)が行われ、
- アステミゾール
- プラセボ(偽薬)
の2グループに分けています。
アウトカムの評価
研究のアウトカムですが、
- かぜ症状が軽快するまでの期間
- 鼻汁の重症度スコアが50%低下するまでの期間
- 治療7日後に完全にかぜ症状が消失した人の割合
の3点を検討しています。
研究の結果と考察
合計で62人が研究の対象となり、最終的に50人が解析対象となりました。
抗ヒスタミン薬(アステミゾール)を投与されたのは23人、プラセボ(偽薬)で治療されたのは27人です。
かぜ症状の改善までに要した日数
かぜ症状の改善までにかかった日数ですが、以下の通りです。
アステミゾール | プラセボ | P |
4.0 (± 2.12) |
5.2 (± 2.3) |
0.06 |
アステミゾールグループのほうがやや早く改善しているように見えますが、統計学的な有意差はありませんでした。
鼻汁の重症度が50%低下するまでに要した日数
アステミゾール | プラセボ | P |
3.4 (± 1.7) |
5.1 (± 2.0) |
0.001 |
鼻汁の重症度が50%低下するのに要した日数はアステミゾールグループのほうが短い傾向になりました。
およそ1.7日早く軽快し、統計学的な有意差もあります。
治療7日後に無症状になる割合
治療7日後に無症状となった人の割合を比較してみたテーブルが以下の通りです。
アステミゾール | プラセボ | P |
18 (79%) |
12 (46%) |
0.015 |
こちらもアステミゾールを投与されたグループのほうが、改善した人の割合は、統計学的に有意に高かったです。
少しわかりにくいかもしれないので、Risk Ratioを使ってみましょう(Stata®︎を使用)。
プラセボグループと比較して、アステミゾール(抗ヒスタミン薬)を使用したグループは7日以内にかぜ症状が完全になくなる割合が1.76倍高かった(1.10〜2.83)といえます。
考察
コクランなど複数の文献から、こちらの研究に対する批判が書かれていました。
1つは、(原著にたどり着けないので確認のしようがありませんが)ランダム化がきちんと行われていたのか、説明不足だったようです。
妥当性というと大げさですが、通常はMethodの欄でどのようにランダム化をしたのか記載します。
さらにResultの最初にランダム化がきちんと行われた結果、年齢や性別など患者背景が均一になっているかをTable 1で記載します。
どうやらこのプロセスのどこかに不備があり、バイアスの評価が不十分、ランダム化のプロセスが不十分とみなされてしまっています。
2つ目に、かぜの症状、かぜの診断に関してです。どのようにかぜを診断したのかの記載が甘かったようです。
例えば研究の対象となった症状の期間が平均6日(1〜365日)となっていたようです。
まとめ
今回の研究が妥当なものであれば、抗ヒスタミン薬は小児のかぜの症状を短くする可能性が示唆されます。
しかし、研究の妥当性が疑問視されているのと、1つの研究結果だけですので慎重に判断する必要があります。
また、今回使用された抗ヒスタミン薬はすでに使用されなくなっています。
他の類似薬への一般化の問題もあると思います。