前回、抗菌薬と喘息発作に関して、いくつか成人の研究結果を示してきました。それほど大きな治療効果ではないのですが、有効性を示唆した論文もあり、気管支喘息発作に抗菌薬を使用するパターンがあるのかもしれないですね:
こちらの研究ですが、小児に一般化するのはやや問題があるかと思っています。もちろん体型の違いもあるとは思うのですが、一番は病原体の分布の違いです。
一般に小児の風邪はウイルスがほとんどで、細菌の関与は比較的少ないです。しかし、先ほどのリンクの論文は、マイコプラズマやクラミジアといった感染が6割を占めています。確かにこれらの感染症があれば、喘息であっても、そうでなくても有効性は示唆される可能性があると思います。
今回は、小児の喘息の契機となる病原体で本当にウイルスが多いのかを見た研究結果を紹介します。
研究の方法
今回のコホート研究は、イギリスのサウザンプトンで行われたもので、
- 9-11歳
- 喘鳴を起こしたことがある
小児を対象に13ヶ月間ほど追跡しています。
この患者において、
- 上気道感染
- 喘息発作
の際に病原体の検索をしています。
研究結果と考察
最終的に108人の患者が解析対象となりました。
39名は喘息の管理薬または発作時の吸入などを使用していたようです。
追跡した結果ですが、
- 最大瞬間呼気速度が低下した患者の80% (126/157)
- 喘鳴のあった患者の80% (66/82)
- 上気道症状のあった患者の85% (41/48)
にウイルスが検出されました。
ウイルスの分布の表は以下の通りです。
ウイルス名 | 症例数 |
ライノウイルス | 147 |
コロナウイルス | 38 |
インフルエンザウイルス | 21 |
パラインフルエンザウイルス | 21 |
RSウイルス | 12 |
その他 | 3 |
風邪の原因となる病原体と比較的類似していると思いました。
まとめ
今回の研究では、小児の喘息発作のきっかけは風邪などの原因となりうるウイルス感染が多かったようです。
成人の研究とは異なる点も多く、病原体の分布などは適切な治療をする上で知っておいても良いでしょう。