抗菌薬

アジスロマイシンはコントロール不良の持続型喘息の発作予防効果はあるか?[成人]

  •  マクロライドは近年、喘息の発作予防に使用されることがある
  •  抗菌作用と免疫調整作用が、喘息発作予防になるのかも?
  •  有効性を検証したRCTは複数ある
マミー
マミー
子供の喘息の発作予防に抗菌薬ってどうなのでしょうか?

Dr.KID
Dr.KID
発作予防薬としては、吸入ステロイドとロイコトリエン拮抗薬の2つが発作予防の柱です。

喘息では気道(空気の通り道)に慢性的な炎症が生じています。
詳細は省略しますが、「好酸球性 (eosinophilic)」と「非好酸球性 (non-eosinophilic)」に別れているようで、前者は吸入ステロイドが効きやすいですが、後者に関しては効きづらいことがあるようです。

マクロライドは抗菌活性だけでなく、免疫調整作用があるというのは昔から言われています。この作用が、気管支喘息において発作予防の作用があるのかを検討したのが今回の研究です。

成人の研究結果になってしまいますが、重要なものですのでご了承ください。

研究の方法

今回の研究は、オーストラリアで行われた多施設共同のRCTになります。

対象となったのは、

  •  喘息の既往あり
  •  18歳以上
  •   吸入ステロイドと長時間作用型の気管支拡張薬を使用

などが該当しています。

治療について

治療は、

  •  アジスロマイシン
  •  プラセボ

のいずれかをランダムに投与しています。

週に3回内服してもらう治療を、48週間続けています。

アウトカムについて

アウトカムに関しては、

  •  喘息発作の回数
  •  少なくとも発作が1回以上あった割合
  •  QOL

などを見ています。

Dr.KID
Dr.KID
週3回のアジスロマイシンを48週はかなり長いですね。

研究結果と考察

最終的に420人が対象で、213名はアジスロマイシンを、207名はプラセボを投与されました。

 喘息発作の回数

アジスロマイシン あり なし IRR
発作回数 1.07
(.85-1.29)
1.86
(1.54-2.18)
0.59
(0.47-0.74)

喘息発作の回数は、アジスロマイシンを使用したグループの方が、レート比で見ると41%ほど低下しているのが分かります。(1 – 0.59 = 0.41 = 41%)

 喘息発作が経過中に1回以上あり

アジスロマイシン あり なし
発作あり 94
(44%)
127
(61%)

パッと見てもアジスロマイシンを使用した方が喘息発作が1回以上ある人の割合は減っています。リスク比 (RR)、リスク差 (RD)、NNT (number needed to treat)に換算してみましょう。

  •  RR, 0.72 (95%CI, 0.60 to 0.87)
  •  RD, -17.2% (95%CI, -26.6 to -7.8)
  •  NNT, 6

と換算でき、6人治療をすると1人がメリットを得る計算になります。

 QOLに関して

アジスロマイシン あり なし 平均差
QOL 5.73
(5.58-5.88))
5.55
(5.40-5.70)
0.36
(0.21-0.52)

QOLに関しては、アジスロマイシンを投与したグループの方が少し高い印象ですね。

 副作用: 下痢に関して

アジスロマイシン あり なし
下痢あり 72
(34%)
39
(19%)

下痢に関しては、当たり前ですが抗菌薬を使用した方が増加していますね。

  • RR, 1.79 (95%CI, 1.28 to 2.52)
  •  RD, 15.0% (95%CI, 6.7 to 23.3)
  •  NNH, 7

と換算でき、7人治療をすると1人がデメリットを余分に得る計算になります。

 感想と考察

ステロイド吸入+長時間作用型β刺激薬で管理中の喘息患者に、アジスロマイシンを48週ほど使用すると、年に約0.8回ほど発作の回数は減り、QOLはやや上がる結果でした。

この結果からもわかるように、AZMを使用して喘息の発作予防にはメリットがあるのは確からしいです。一方で、適応に関しては慎重になります。何より48週間の内服はかなり長いですし、耐性化の点を考慮すると安易には処方したくないでしょうし、抗菌薬の内服をずっと続けられるわけでもありません。

While azithromycin was associated with an increase in resistant organisms at the end of treatment, this was not statistically significant.

著者らはこんな風に言っていますが、統計学的な有意差がないから、耐性菌の問題が許されるわけではないのです。この辺り、P値とダイコトマニアに陥った考え方と思います。統計学的な有意差がなくとも、耐性菌の割合が増えていれば、それは問題視した方が良いでしょう。今回の例でいえば、30%ほどだった耐性率は60%まで上がっているわけです。P値が0.05を下回っていないからと言って、「耐性化と関連がない」わけではないのです。

P値とダイコトマニアについて 年に30-50本ほどの医学英語論文を査読しており、様々な研究者の論文を査読しています。また、私自身も論文を年に5〜10本ほど投稿して...

また、マクロライドに本当に免疫調整作用があるのかは、この研究のみでは少し難しい気がしています。単に抗菌薬を飲んでいたから、風邪などウイルス感染の際に余分な合併症を防いだ結果なのかもしれません。

Dr.KID
Dr.KID
メリットはありそうだけれども、適応と副作用、耐性菌の問題の考慮も必要

今回の研究は成人のものですので、安易に小児に一般化しない方が良いでしょう。

まとめ

成人の結果になりますが、吸入+長時間作用型β刺激薬で管理中の喘息患者に、アジスロマイシンを48週ほど使用すると、年に約0.8回ほど発作の回数は減り、QOLはやや上がる結果でした。

一方で、抗菌薬の長期内服に伴う、下痢の副作用と耐性化の懸念があります。

マミー
マミー
抗菌薬の有効性はありそうだけれども、どんな人に使用するのかは難しそうですね

Dr.KID
Dr.KID
治療の対象、メリット、デメリットの高度な専門家の判断が必要かと思います。難治性の場合は、その道の専門家に一度は受診するのが良いかもしれないですね。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。