就学前の小児は気管支炎や肺炎といった下気道感染を繰り返すことがあります。
特に小児では喘鳴を起こしやすい体質であったり、喘息と診断されるお子さんがいますが、これらの小児が下気道症状を呈したら、早めに抗菌薬を使用すべきかは議論が分かれるところです。
例えば、成人のRCTでは抗菌薬の使用が喘息にわずかですが有益であったとする報告もあるようです。
一方で、大規模な観察研究では否定的な結果でした。
一方で、小児での研究は不十分であるため、今回の研究が行われたようです。
研究の方法
今回の研究は、二重盲検RCTが9施設で、2011-2014年に行われています
対象となったのは、
- 生後12〜71ヶ月
- 喘鳴の既往があり
- 下気道感染があり
などが該当します。
治療について
治療に関してですが、
- アジスロマイシンを5日間
- プラセボを5日間
投与しています。
アウトカム
アウトカムは、
- 重症な気管支炎への進展
を中心に見ています。
「重症」とは、
- 1時間で3回以上の吸入が必要
- 4時間に1回以上の吸入が必要
- 1日で6回以上の吸入が必要
- 中等度から重度の咳が5日以上持続
などを定義したようです。
研究結果と考察
最終的に937人が解析対象となり、
- アジスロマイシン:473エピソード
- プラセボ:464エピソード
でした。
重症への進展
AZM | プラセボ | HR | |
全体 | 35/473 | 57/464 | 0.64 (0.41-0.98) |
その他、年齢、性別などでサブグループに分けた結果は以下の通りでした。
(結果は論文より拝借:具体的なHRの数値が明記ないため)
ほとんどのケースでAZMを使用した方がメリットがありそうですが、季節性によって多少違いがありそうなのが面白いですね。
気道感染の回数毎にリスクも比較しており、以下の通りでした:
AZM | プラセボ | NNT | |
初回 | 16/223 | 22/220 | 33 |
2回目 | 13/146 | 19/147 | 14 |
3回目 | 5/78 | 9/74 | 10 |
4回目 | 1/26 | 7/23 | 7 |
感想と考察
喘鳴の既往のある小児の下気道感染にAZMを使用すると重症化の予防になりそうな結果ですが、いくつか気になる点もあります。
例えば、最初にランダム化されたのは307 vs. 300人でしたが、最後まで完遂できたお子さんは223名 vs. 220名と割と追跡不能例が多いです。
また、今回の研究は分母に追跡時間やエピソードの回数を使用していて、HRで治療効果を見ています。このため、実際に1回治療コースでどのくらいなのかというのも、やや捉えづらくなています。
あとはfigureの提示が多く、具体的なHRの提示がない点もやや残念です。supplemental tableとかで提示しないと、メタ解析の際など困るのではないでしょうか。
まとめ
今回の研究では、喘鳴の既往のある小児にAZMを使用すると、重症化を予防する可能性がある点が示唆されています。
とはいえ、喘鳴の既往のある小児にルーチンでAZMを投与するのは現実的ではないですし、研究の方もいくつか問題点・曖昧な点が散見されています。
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