- 小児においてバロキサビル(ゾフルーザ®︎)の有効性のデータは不十分
- 耐性化の懸念がある
- よって、小児においてゾフルーザ®︎の使用は推奨されない
バロキサビル(ゾフルーザ®︎)が2018年に承認され、成人だけでなく、小児でも使用されているケースもあるようです。「1度飲むだけで治療ができる」ため、アドヒアランスの改善が期待できるメリットがあります。
特に小児の場合、保護者が子どもに内服させるため、その手間が減るメリットを大きく考えている医師もいるかもしれません。しかし、新薬が出た際に使用すべきか否かは、まずは対象集団においてランダム化比較試験などをはじめとする質の高い研究が行われ有効性が検証されているのか、副作用などのデメリットがないのかといったデータに基づいて判断する必要があります。
研究結果と考察
12歳以上のインフルエンザへの有効性
12歳以上の健常人のインフルエンザを対象に、バロキサビルの有効性を検討したRCTが2018年に報告されています19。バロキサビル、オセルタミビル、プラセボの3剤において、インフルエンザ症状改善までの時間を検討しています。インフルエンザ症状改善までの時間の中央値は、プラセボで80.2時間、バロキサビルでは53.7時間でした。バロキサビルのほうが、1日ほど症状の改善が早いようです。解熱までの時間に関しても、プラセボで42時間、バロキサビルで24.5時間と、バロキサビルのほうが18時間ほど早く改善しているのが分かります。さらに、バロキサビルとオセルタミビルの症状改善までの時間(中央値)を比較していますが、ほとんど同等の結果です(バロキサビル 53.5時間 vs. オセルタミビル 53.8時間)。
ウイルスの排泄量も比較していますが、オセルタミビルやプラセボと比較して、バロキサビルのほうが検出量は早く改善しています。特に投与開始後2日目の減少率はバロキサビルのほうが大きいですが、投与5日目くらいになると全てのグループでほとんど差はなさそうです。
12歳未満の小児への使用について
12歳以上のインフルエンザ罹患者においてバロキサビルはオセルタミビルとほぼ同等の効果が認められていましたが、12歳未満の小児への有効性の検証は、2019年秋の執筆時点では不十分で、推奨できないのが現状です。さらに、バロキサビル耐性のウイルスの検出が内服歴のない小児において報告されています20。
さらに、2019年に報告された観察研究によると21、1〜11歳の小児のインフルエンザにおいてバロキサビルを内服させたところ、治療前にはなかったウイルスの変異(PA/I38T/M)が、治療後に23.4%(18/77)で認めたと報告されています。2019年秋に日本小児科学会から「2019/20シーズンのインフルエンザ治療指針」が出ており22、バロキサビルは「12歳未満の小児に対して積極的な投与を推奨しない」旨が記載されています。
まとめ
12歳未満に関しては有効性の検討は不十分で、12歳以上のデータを参照しても他の抗インフルエンザ薬より優れた点はほとんどなさそうです。耐性化の懸念もあるため、積極的な使用が推奨されないのも当然と思います。
12歳未満の小児において
- バロキサビル(ゾフルーザ®︎)の有効性の評価は不十分
- 耐性化の懸念が大きい
- 基本的に使用は控えるべきと考えられている