新生児の最初の沐浴をどうするかは、2000年くらいまではあまりきちんとしたエビデンスがなく、2000年以降くらいから徐々に研究数が増えてきている印象です。
正期産児を取り扱った研究をこれまで解説してきましたが、、今回は後期早産児の研究結果を見つけましたので、ご紹介させていただければと思います。
出生後の新生児の皮膚ケアですが、まずはタオルなどで体についた血液や付着物、胎便などを拭くのは当然として、その後に
- すぐに沐浴させる
- 半日〜1日程度してから沐浴させる
- スポンジなどで体を拭く
- ドライケアをする(基本的に入浴させない)
など、施設毎にかなり異なる方針がとられていると思います。
特に後期早産児は、正期産児と比較して体温の変動に弱い可能性が高いと予想されます。さらに過去の研究では、出生後24時間以内に入浴させると、低体温のリスクが高まると示唆されている研究も複数あります。
一方で、通常の沐浴 vs. スポンジによる清拭を比較した研究は少なく、今回行われたようです。
後期早産児の皮膚ケアは、沐浴の方が良いのか?それとも、濡らしたスポンジでの清拭の方が良いのか?
研究の方法
今回の研究は、ランダム化比較試験で検討されました。対象となったのは、
- 生後35〜36週
- NICUなどへの入室の必要なし
- 早産以外の合併症なし
などを参考に行われています。
皮膚ケアの方法について
スキンケアの方法ですが、出生後24〜36時間してから
- 沐浴をする
- スポンジで体を拭く
のいずれかにしています。
沐浴は10分以内に行われ、湯温はおよそ39℃前後に設定し、室温も調整されています。入浴後は暖められたブランケットの上で体を拭いています。
スポンジでの清拭の場合、新生児用のバスタブには入れず、39℃前後のお湯に浸したスポンジで体を拭いています。
体温の計測について
入浴前後で体温を計測していて、
- T1: 入浴直前
- T2: 入浴10分後
- T3: 入浴30分後
です。
研究結果と考察
最終的に100人の新生児が対象となり、50人が沐浴、50人がスポンジで体を拭いています。母集団の特徴として、
- 週数:36.1週
- Apgar 1分:8.04
- Apgar 5分:8.91
- 出生体重:2640g
- 母の年齢:31.6歳
- 男児:52%
- 経膣分娩:53%
となっています。
体温の推移について
通常の沐浴とスポンジでの清拭で体温の変動が異なるかみてみましょう。
沐浴 | スポンジ | |
T1 | 37.06 (36.67, 37.83) |
37.06 (36.56, 37.67) |
T2 | 36.83 (36.33, 37.39) |
36.72 (36.11, 37.33) |
T3 | 37.0 (37.05, 37.61) |
36.89 (36.61, 37.33) |
沐浴させたグループの方が体温が高い傾向ですが、0.1℃ほどのわずかな違いでした。
今回の研究では、アウトカム(体温)が繰り返し計測されているのでrepeated ANOVAモデルを使用していますが、時間 x 入浴方法には統計学的な相互作用を認めています。
考察と感想
今回の研究では、スポンジで清拭した場合の方が、0.1℃ほど体温が低下しやすい傾向にあり、統計学的な有意差がありました。
しかし、臨床的には0.1℃はそれほど重要でもなく、統計学的な有意差と臨床的な重要性は切り離して考えた方が良さそうです。
スポンジによる清拭は、小児の発熱時に解熱効果を狙って、欧米では昔から行われていたホームケアで、確かに体温は下がる傾向にあります。
しかし、今回の後期早産児は、スポンジでの清拭を含めて、かなり厳密に体温管理されており、そのため清拭でも体温の変動が少なかったのではと考えられます。
室温を管理し、湯温を管理し、清拭後の低体温の予防(温めたタオルやブランケットを使用する)などがあるという条件下であれば、沐浴と変わらない安全性と言えそうです。
まとめ
今回の研究では、後期早産児を対象に、沐浴とスポンジによる清拭が体温に与える影響を調査しています。
スポンジによる清拭の方が、やや体温低い傾向にはありますが、0.1℃ほどであり、臨床的には重要な有意差ではないと思われます。
今回の結果は、入浴やスポンジ浴の環境を厳密に整えられた環境下で行われたものである点は、留意しておく必要があります。