統計や疫学の勉強会やセミナー、あるいは学会などでよく聞くフレーズですが、
- 観察研究では、因果関係はいえない
- 観察研究だから、あくまでも相関関係
などといった発言を見聞きすることがあります。
確かに観察研究では様々なバイアス(交絡、選択バイアス、情報バイアス)が入り込むため、治療効果の推定値がRCTと異なってしまうことはあります。
ですが、これは観察研究がどのようなデザインで行われ、バイアスをどれだけきちんと対処できて、どれだけ残っているのかなどの面が大きいと思います。
もちろん完璧なバイアスの対処は難しいですが、それは程度問題で、「観察研究=バイアスあり = 因果関係はいえない = 単なる相関」と単純化してしまうのは問題だと思います。
今回はこちらの論文を紹介します。
こちらの論文では、ランダム化比較試験と観察研究の結果のあるトピックを選んで、それぞれメタ解析をしています。その治療効果の推定値を比較して、RCTと観察研究でどのくらい隔たりがあるのかをみています。
「観察研究は、RCTと比較して、治療効果を過剰評価しがち」という点を言及した論文です。
研究結果と考察
全部で5つの項目で行われていましたが、小児に関連しそうなのはBCGワクチンと結核だけなので、こちらだけ報告します。
研究数 | N | 治療効果 | |
RCT | 13 | 359,922 | 0.49 (.34, .70) |
観察研究 | 10 | 6,511 | 0.50 (.39, .65) |
RCTも観察研究もほぼ同等の治療効果を報告しています。
黒の結果がRCTで、白は観察研究です。ほぼ似たような分布をしているのが分かりますが、観察研究の方が集簇していますね。
考察と感想
「RCT > 観察研究」と安易に考えたくなってしまうのもわからないではないですが、RCTといえどもドロップアウトが多かったり、盲検化が不十分だとバイアスに塗れることはあり得ます。
また、「観察研究は治療効果やリスクを過剰に推定する」というのもよく見聞きしますが、必ずしもそうではありません。今回の著者らは、この発言に争いたかったようですね。
まとめ
RCTでも観察研究でも、BCGワクチンは結核の予防効果を同じくらい認めています。
観察研究であっても、必ずしも治療効果を過剰に推定するわけではないですし、結局は個々の研究の質や外的妥当性の見極めが重要なのだと思います。