感染予防として、手洗い・マスクはよく言われますが、どのくらいのエビデンスがあるのでしょうか。
その他、バスやタクシーの利用、外食など、人の行動と感染症のリスクは密接に関連していそうです。
今回は、これらを検討した研究を調べてみました。
- 北京において、SARS流行時に感染の危険因子・予防因子の検討
- マスクや頻回の手洗いは、感染予防になる
- 外食、公共交通機関の頻回の使用は、感染の危険因子
Risk Factors for SARS among Persons without Known Contact with SARS Patients, Beijing, China. Emerging Infectious Diseases
2003年のSARS流行時の研究です。
研究の概要
方法
北京において、matched case-control studyが行われました。
性別・年齢といった因子でマッチングをしています。ケースは、SARSが疑われた患者を中心に集積しています。
コントロールは、ケースの電話番号をもとに、近い電話番号に電話をかけてサンプルしています。
Neighborhood matchingに近いやり方ですね。
結果
|
ケース |
コントロール |
OR |
N |
94 |
281 |
|
病院の受診 |
30 |
10 |
3.6 |
外食 |
4 |
117 |
0.47 |
なし |
62 |
70 |
|
週に1回 |
14 |
15 |
1.2 |
週に2回以上 |
24 |
15 |
2.3 |
バスの使用 |
|
|
|
なし |
62 |
73 |
|
週に1回 |
13 |
7 |
2.3 |
週に2回以上 |
25 |
19 |
1.7 |
タクシー |
|
|
|
なし |
80 |
79 |
|
週に1回 |
7 |
16 |
0.4 |
週に2回以上 |
13 |
4 |
3.2 |
地下鉄の利用 |
|
|
|
なし |
88 |
91 |
|
週に1回 |
1 |
4 |
0.3 |
週に1回以上 |
11 |
5 |
2.5 |
マスクの着用 |
|
|
|
なし |
46 |
27 |
|
時に |
27 |
30 |
0.5 |
いつも |
27 |
43 |
0.3 |
手洗い |
|
|
|
食事前に |
83 |
89 |
0.6 |
トイレ後に |
88 |
93 |
0.5 |
帰宅後に |
78 |
90 |
0.3 |
感想と考察
すごく一般的な内容ですが、SARSの流行期において、病院へ受診する、タクシーやバス、地下鉄を頻回に利用する、外食をする、といった行動は、感染の可能性を高めたのかもしれません
一方で、マスクを着用する、手洗いをするといった、感染防御に関しては、予防効果が示唆される結果でした。
まとめ
北京で行われた、SARSへの感染の予防因子を検討した小規模な研究です。
マスク、手洗いといった一般的な方法は、予防効果を示唆する結果がでています。
一方で、公共交通機関の頻回の使用、外食は感染のリスクが上昇していたようです。
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/21 02:10:50時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について