今回は南米のペルーで行われた研究結果をご紹介します。
この研究では、次サリチル酸ビスマスが乳幼児の下痢で有効か否かを検証しています。
(1993年の発表時で)北米・南米では次サリチル酸ビスマスはよく使用されているようで、OTCとして市販薬としても発売されていたようです。
次サリチル酸ビスマスが有効か検討した研究も過去にあり、
- 下痢の頻度が減少した
- 下痢の期間が短縮した
といった結果が出ているようです。これらの過去の研究では、主に入院患者で点滴を受けている方が対象だったことがあり、外的妥当性については少し疑問視されていたようです。
このため、今回の研究では、一般的な小児科のセッティングで、つまり経口補水液に次サリチル酸ビスマスを追加することでも有効性が確認できるのかを検討しています。
研究の方法
今回の研究は、
- 1990年〜1991年
- 3ヶ月〜59ヶ月
- 下痢が1日に3回以上
- 下痢の発症から5日以内
- 血便なし
などを対象にランダム化比較試験が行われました。
治療は、経口補水液に加えて
- 次サリチル酸ビスマス (100 or 150 mg/kg/d)
- プラセボ
のいずれかを投与しています。
アウトカムは、
- 下痢の持続時間
- 下痢の量
- 嘔吐
- 入院日数
などを計測しています。
研究結果と考察
最終的に252人が研究に参加し、
- 84名:次サリチル酸ビスマス 150 mg/kg/day
- 85名:次サリチル酸ビスマス 100 mg/kg/day
- 83名:プラセボ
の内訳でした。
年齢はおよそ14ヶ月、発熱は8割前後で認めていました。
下痢の原因はロタウイルスが3−4割ほど、病原性大腸菌が3割、カンピロバクターが10%ほどでした。
下痢の期間について
(論文より図を拝借)
こちらの図は下痢の持続時間とその割合をみています。
次サリチル酸ビスマスを内服しているグループのほうが、下痢が寺族する確率は低くなっています。
その他のアウトカム
その他のアウトカムをみています。
プラセボ | ビスムス 100 |
ビスムス 150 |
|
下痢の量 ml/kg |
260 | 182 | 174 |
経口補水量 | 314 | 239 | 236 |
嘔吐量 | 16.2 | 11.6 | 8.7 |
入院日数 | 4.1 | 3.3 | 3.4 |
次サリチル酸ビスマスを使用しているほうが、
- 下痢・嘔吐の量が少なく
- 経口補水量も少なく
- 入院日数が短い
傾向にありました。
副作用について
副作用については、
- プラセボで発疹が1人
- 次サリチル酸ビスマスで発疹が1人
だけ報告されています。
考察と感想
今回の研究では、次サリチル酸ビスマスを内服すると下痢の期間が短縮し、嘔吐や下痢の量が少なくなる傾向があり、1日ほど早期に退院できる傾向にありました。
感想としては、月並みですがプロバイオティクスとの比較が気になりましたね。
下痢の研究は小児でも豊富にされているのですが、なぜかそれぞれの薬を比較した研究が少ないです。
また、1990年代の結果を現代に当てはめてよいかも懸念があります。
この時期は小児の下痢はロタウイルスが圧倒的に多く、現在はワクチンの普及もあり、病原体の分布も変わっています。
まとめ
今回の研究では、次サリチル酸ビスマスを内服すると下痢の期間が短縮し、嘔吐や下痢の量が少なくなる傾向があり、1日ほど早期に退院できる傾向にありました。
一方で、この結果を現代に一般化してよいかは、やや慎重です。
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