離乳食を開始して徐々に野菜や果物も導入していくと思いますが、そのうえで「母乳はどうしたらいいですか?」と健診の時に相談されることがあります。
今回は、母乳を続けることで果物や野菜の摂取量にどのような影響があるのかを検討した日本国内の研究をご紹介します。
Okubo H, et al. Feeding practices in early life and later intake of fruit and vegetables among Japanese toddlers: The Osaka Maternal and Child Health Study. Public Health Nutrition. 2016;19:650-657.
結論からいうと、母乳を長く続けていると、2歳時点での野菜不足の可能性は減りますが、果物不足にはほとんど影響がない印象でした。
また、離乳食の開始時期は2歳時点での果物摂取にはほとんど影響がなさそうですが、野菜の摂取頻度には少し影響があるかもしれません。
前回、生後12ヶ月未満の野菜やフルーツの摂取量が、6歳時点での食生活に影響を与えることを示唆した印象のある研究をご紹介しました。
生後12〜24ヶ月未満は、味覚や食の好みを形成する「sensitive period(感受期)」とも考えられているようです。
研究の方法
今回は日本国内で行われてコホート研究のデータを利用しています。
763組の母子データを利用して、母乳の期間や離乳食の開始時期が、2歳時点での食生活に与える影響を検討しています。
母乳や離乳食の開始と2歳時点での食生活の交絡因子として、
- 小児の性別、出生体重、月齢
- 母の年齢、BMI、教育歴、収入、喫煙歴、フルーツと野菜の消費量
を対処しています。
研究結果と考察
763組の母子データを利用してデータ解析が行われました。
男女比ほほぼ1:1で、平均39週で出生、出生児体重は3071gでした。
母乳に関しては6ヶ月未満、6〜11ヶ月、12〜17ヶ月、17ヶ月以上がそれぞれ約25%ほどでした。
母乳栄養の期間と果物摂取
こちらの図は、母乳栄養の期間と2歳時点での果物摂取不足をみています。母乳期間は短くても長くても、果物摂取不足にはあまり関係がなさそうでした。
母乳栄養の期間と野菜摂取
こちらの図は、母乳栄養の期間と2歳時点での野菜摂取不足をみています。母乳期間は6ヶ月以上のほうが、野菜摂取不足の可能性は低くなっています。
ちなみに、統計モデルで親の野菜摂取量や教育レベルなどは対処されています。
離乳食開始時期と2歳時点の果物・野菜摂取不足
離乳食開始時期と、2歳時点の果物・野菜摂取不足のオッズをみています。離乳食開始時期は、〜5ヶ月vs. 5〜6ヶ月vs 6ヶ月〜に分けています。
こちらの結果をみると、離乳食の開始時期によって2歳時点の果物摂取不足に影響があるかをみています。
生後5〜6ヶ月に果物摂取を開始すると、2歳時点での果物摂取不足のオッズが一番低そうですが、この推定はやや不正確ですね。
この図は、離乳食開始時期と2歳時点での野菜摂取不足をみています。
離乳食開始時期が5ヶ月以降のほうが、野菜摂取不足のオッズはやや低いですが、95%信頼区間(エラーバー)は広く、不正確な推定になります。
考察と感想
母乳栄養の期間は6ヶ月以上の方が2歳時点での野菜不足の可能性は低いけれども、果物摂取不足にはあまり影響なさそうでした。また、離乳食の開始時期と2歳時点の果物・野菜不足のオッズに影響は少しあるかもしれませんが、今回の研究結果ではこの可能性は不安定なものです。
今回のような研究の場合、第3の因子(交絡因子)によって偽りの相関が生じる場合があります。例えば、母乳の期間が2歳での食生活の与える影響をみようにも、親の収入や食習慣、教育レベルなどに影響されます。
例えば親の教育レベルが高いほど母乳のメリットを知っているので、長く母乳栄養をするかもしれません。
さらに、親の教育レベルが高いほど、野菜や果物といった健康的な食生活を送れるように、努力しているかもしれません。
今回の研究では、こういった交絡因子は統計学的に対処されています。対処するとは、統計学的なモデル(数式)上で、同じ収入、同じ教育レベルの人で、母乳期間が食生活に与える影響をみているという意味です。
まとめ
母乳栄養の期間は6ヶ月以上の方が2歳時点での野菜不足の可能性は低いけれども、果物摂取不足にはあまり影響なさそうでした。
また、離乳食の開始時期と2歳時点の果物・野菜不足のオッズに影響は少しあるかもしれませんが、今回の研究結果では、あまりはっきりと断言するのは難しいでしょう。
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