急性細気管支炎は乳幼児に多い疾患でして、これが原因で入院するお子さんもたくさんいます。原因として多いのはRSウイルスやヒトメタニューモウイルスなどです。
一般的に行われている治療ですが、
- β刺激薬の吸入
- ステロイド
- 生理食塩水の吸入
などがありますが、有効性に関してはわずかであるか、ほとんど認めないケースが多いです。
小児がどのように治療され、どのような小児が入院しやすいのかといった統計はあまりされたおらず、今回の研究がされたようです。
研究の方法
今回の研究は、米国小児科学会救急医学部門のメンバーを対象に、アンケートを行い、治療の好みを聴取しています。
対象となったメンバーを無作為に4群に分け、4つの分類のうち1つを含む調査を郵送しています。分類は以下の通りです:
Sp02 | 94% | 92% |
呼吸数 | 50 | 65 |
つまり、2 x 2 = 4通りのケースのいずれかで(例えば、SpO2 = 94%かつRR = 50の患者)、どのような治療、検査をし、入院基準はどう考えているかを聴取しています。
研究結果と考察
2000年、医師812名が対象で、そのうち519名(64%)から返事を得ることができました。医師の特徴として、
- 平均 43歳
- 男性 55%
- トレーニング終了後 10年
- 小児のフェローシップ修了は55%
- 小児救急の専門医:76%
- 小児病院 46%
- 大学の関連病院:76%
- 小児科レジテント卒:90%
となっています。
検査や治療の推奨について
ほとんどの回答者は
- 気管支拡張薬(96%)
- 鼻からの吸引(82%)
- 酸素投与(57%)
を推奨していました。
一方で、
- うっ血除去薬(9%)
- ステロイド(8%)
- 抗生物質(2%)
を推奨した回答者はほとんどいませんでした。
入院基準について
実臨床では一概には言えませんが、今回の調査では、
- SpO2 94%;RR 50/min
- SpO2 94%;RR 65/min
- SpO2 92%;RR 50/min
- SpO2 92%;RR 65/min
の順に重症度が高いと考え、入院させる可能性は
- 43%
- 58%
- 83%
- 85%
としていました。アメリカの救急医の感覚では、SpO2 92〜94%あたりが入院の閾値になっているようですね。
治療の傾向について
治療の傾向について見てみましょう:
SpO2 | 94% | 94% | 92% | 92% |
呼吸数 | 50 | 65 | 50 | 65 |
気管支拡張薬 | 92% | 95% | 97% | 98% |
鼻吸い | 80% | 82% | 85% | 80% |
酸素投与 | 34% | 39% | 75% | 81% |
うっ血除去薬 | 7% | 10% | 10% | 9% |
ステロイド | 7% | 6% | 8% | 11% |
抗生剤 | 2% | 2% | 2% | 3% |
左から右へ行くほど重症度が高いという前提で調査していますが、重症度にかかわらず気管支拡張薬、鼻吸い、薬の投与の割合はほとんど変わらないですね。
一方で、酸素投与は重症になる程高まっていますね。重症になれば当然、酸素投与が必要になりますので、当たり前の結果でしょう。
検査の傾向について
こちらは検査の傾向になります:
SpO2 | 94% | 94% | 92% | 92% |
呼吸数 | 50 | 65 | 50 | 65 |
レントゲン | 55% | 58% | 64% | 67% |
RSウイルス抗原 | 42% | 42% | 52% | 53% |
血算 | 9% | 9% | 10% | 15% |
血ガス | 4% | 5% | 2% | 11% |
血液培養 | 3% | 4% | 4% | 4% |
何も検査しない | 34% | 31% | 25% | 24% |
重症になる程検査をする確率は上がりそうですね。RSウイルス感染を確認したり、そのほかの合併症がないかを確認するので、これもある意味当然でしょう。
日本的な外来診療で考えると、血液検査をする確率はかなり低いですね。例えばSpO2 92%ですと、ほぼ入院が前提でしょうが、それでも10-15%くらいしか血算取らないのはちょっと驚きです。
考察と感想
国によって治療プラクティスはかなり異なるのが実感できました。同じアンケートを日本の救急医や小児科医にしたとしても、かなり異なる結果になるのではないでしょうか。
意外と気管支拡張薬や鼻吸いを採用する医師が多かったですね。
気管支拡張薬の有効性はわずかか、ほぼ無効という結果も出ており、この結果に対しては著者らは批判的な記載を見かけました。
アメリカの医師も意外と鼻吸いをしている点が興味深かったです。鼻を吸うのは割と日本を含むアジアの文化と勝手に思っていたのですが、実はそうでもなさそうですね。
アンケートという建前上の回答と、実臨床の乖離がどのくらいかも気になるところですね。
まとめ
今回の研究は、アメリカの小児救急医を中心に、細気管支炎の診療方針をアンケート調査しています。
急性細気管支炎の入院基準はSp02が92%〜94%の間が閾値になっている印象でした。
9割以上で気管支拡張薬を使用し、8割ほどは鼻吸いをしています。
一方で、ステロイドや抗菌薬の使用する可能性は1割以下でした。
最近は廉価で鼻吸いの機械が販売されています。
こちらは、家に置くタイプの吸引機ですが、クリニックや病院で使用しているものと遜色ない吸引力です。
こちらはコンパクトタイプで、やや吸引力が落ちますが、手軽に使えるので保護者の方々からも人気があります。