スクリーンタイム(テレビなどの画面の視聴時間)について、18〜24ヶ月未満の乳幼児は、基本的に設けないことが推奨されています。なた、2〜5歳に関しては、1時間未満が良いとされています。
この理由の1つとして、学業やライフスタイルに悪影響する可能性があります。
今回は、その点を見た論文をご紹介します。
- カナダで行なわれたコホート
- テレビ・電子機器と小児の幸福度などを検討
- 使用時間が長いと、感情的な問題や家庭機能不良のリスクは高まる傾向
スクリーンタイムは、米国小児科学会は2016年の改訂で、2歳未満は0時間(みせないこと)、2〜5歳は1時間までを推奨しています。テレビなどを観る際も、保護者と一緒にみることを推奨しています。
オーストラリアも似たような方針を出しています。
研究の概要
背景・目的:
今回の研究は、幼児期のテレビ曝露が、小学校4年生の学業、心理社会的およびライフスタイル特性に与える影響を推定している。
方法:
カナダのケベック国立統計研究所によって行われた前向きコホート研究である。
合計1314名の小児が対象となっている。
メディアへの暴露は、生後29ヵ月および53ヵ月時点での、テレビへの1週間の曝露時間に関するデータである。このデータは、親からの報告をもとにしている。
10歳時の学術的、心理社会的、健康的行動とBMIを従属変数にして、回帰分析を行い、早期および就学前のテレビへの暴露の影響を推定している。
結果:
既存の個人および家族の因子を統計モデルで調整すると、 29か月でのテレビ曝露が1時間増えるごとに、教室への参加は7%減少(95%信頼区間[CI], -0.02~-0.004)および数学的達成は6%(95% CI、-0.03から0.01)減少した。
さらに、29か月でのテレビ曝露が1時間増えると、
- 同級生からの被害が10%増加(95% CI、0.01から0.05)
- 週末の身体活動に費やす時間を13%短縮(95% CI、0.81から2.25)
- 肉体労働を伴う活動で9%減少(95% CI、-0.04から0.00)
- ソフトドリンクの消費スコアが9%上昇(95% CI、0.00から0.04)
- スナックの消費スコアが10%上昇(95% CI、0.00から0.02)
- BMIが5%増加 (95% CI、0.01から0.05)
といった結果でした。
就学前のテレビ暴露においても、類似の傾向を示していました。
結論:
早期にメディアへの長時間の曝露は、青年期における不健康な気質と関連しており、この発達経路を示す可能性がある。
このようなリスクについての集団レベルの理解は、子どもの発達を促進するために不可欠である。
考察と感想
IDEFICSは初めて聞いたコホートですが、欧州8カ国で行なわれた、わりと大規模な小児のコホートですね。
論文中のTable 3が結果の要約としてはよさそうで、
女児は、
- 同僚との問題:平日のPC + ゲーム
- 感情的な問題:平日のPC + ゲーム
あたりが大きく影響していそうな印象でした。
一方で、男児は大きくORをあげるものはなかったですが、PCより平日のテレビが家庭の機能に悪影響しているようです。
この論文では[dose-response relationship]を検証といっていたのですが、統計モデルはlinearityを仮定している点がやや残念でした。spline modelとかを使用して、データを見せるなど工夫があってもよかったと思っています。
まとめ
今回の研究は、欧州8カ国で行なわれたコホート研究で、テレビや電子機器が小児に与える影響をみています。
テレビや電子機器の過剰な使用は、小児の感情的な問題や家庭の機能に悪影響する可能性が示唆されていました。
乳幼児のスクリーンタイムの考え方をまとめたnoteはこちらになります↓↓
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