今回は感染症と発がんについて簡単に解説していこうと思います。
2012年のデータですが、世界的には15.4%のがん患者(220万人)が感染症と関連して発がんしていると考えられています。
がんと感染症
種類 | 病原体 |
胃癌 | ピロリ菌 |
肝臓癌 | B型肝炎、C型肝炎 |
子宮頸癌 | HPV |
バーキットリンパ腫 | EBウイルス |
カポジ肉腫 | HIV, HHV8 |
成人T細胞性白血病 | HTLV1 |
胆管癌 | Opisthorchis viverrini Clonorchis sinesis Liver fluke |
膀胱癌 | Schistomiasis |
最近では、HIVと肝臓癌の関連もささやかれているようです。
「感染症と発がん」は国の貧富の差と相関する
低所得ほど感染症が発がんに寄与する割合(寄与率)は高い傾向にあります。
例えば、世界各国の所得を4分にすると、以下のようになります。
国の所得 | AF(%) |
Very high | 7.6% |
High | 13.2% |
Medium | 23.0% |
Low | 25.3% |
国別のマップで見ると、以下のようになります。
(参考文献より拝借)
感染症と発がんの順位
がん発症数 | AF | |
ピロリ菌 | 77万 | 35.4% |
HPV | 64万 | 29.5% |
HBV | 42万 | 19.2% |
HCV | 17万 | 7.8% |
EBV | 12万 | 5.5% |
HHV8 | 4.4万 | 2.0% |
Schistosoma haematobium | 7000 | 0.3% |
HTLV1 | 3000 | 0.1% |
Opisthorchis viverrini | 1300 | 0.1% |
Total | 220万 | 100% |
世界的にはピロリ菌–>胃癌の経路がいまだに一番多いようです。その次はHPVに関連した腫瘍になります。
IARC classificationについて
Group 1
まずは、IACRの分類でGroup 1 (sufficient evidence)とされた病原体を見ていきましょう。
Virus
- Human immunodeficiency virus type 1 (infection with)
- Human T-cell lymphotropic virus type 1 (HTLV-I)
- Human papillomavirus types 16, 18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 59 and 66
- Hepatitis B virus (chronic infection with)
- Hepatitis C virus (chronic infection with)
- Human herpesvirus 8 (Kaposi sarcoma-associated herpesvirus)
- Epstein-Barr virus
Bacterium
- Helicobacter pylori (infection with)
Worms
- Clonorchis sinensis (infection with)
- Opisthorchis viverrini (infection with)
- Schistosoma haematobium (infection with)
Group 2A
- Mercaptobenzothiozole Merkel cell polyomavirus (MCV or MCPyV) (Merkel cell carcinoma, MCC)
IARCのGroup 2Aには、こちらのウイルスが分類されています。
個人的には、あまり知らないウイルスですね。
感染症による発がんが生じるメカニズムについて
感染症と発がんに関して、詳細なメカニズムは不明ですが、いくつか機序が述べられています。
- 慢性炎症
- 腫瘍タンパクの合成
- 遺伝的な不安定性
などが示唆されているようです。
まとめ
今回は、感染症とがんをテーマに疫学的な分布を簡単に解説してきました。
次回以降は、ここの病原体について、簡単に解説できればと思います。
参考文献
- Lancet Glob Health 2016; 4: e609–16