前回は世界における肺癌の疫学について簡単に説明してきました。
今回は、乳癌に注目して疫学の話をしていこうと思います。
Cancer Epidemiologyの教科書は以下↓
乳癌の発症と死亡
肺癌の発症と死亡数ですが、2018年に
- 209万人の新規発症
- 63万人の死亡
が生じたと推定されています。
世界的に、乳癌は女性の新規に発症するがん1位ですし、死亡数も1位です。
現在は、徐々に途上国の症例が増加しつつあります。また、平均的には予後が比較的良い癌であるため、罹患率が上昇傾向にあります。
ご存知の方が多いと思いますが、年齢が発症に大きく影響しています。
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国別にみた発症と死亡
国別にみた発症と死亡は以下の通りです。
発症、死亡とも
- 中国
- アメリカ
- 日本
の順番です。人口と高齢化の分布が決め手でしょう。
年齢調整後の発症・死亡率について
各国で年齢の分布が異なるので、その分布を調整した発症率と死亡率は以下の通りです。
年齢調整発症率は以下の通りでした:
- ハンガリー
- セルビア
- フランス
年齢調整死亡率は以下がトップ3です:
- ハンガリー
- セルビア
- ギリシア
年齢を調整して、率に変換すると少し景色が変わりますが、トップ2はハンガリー、セルビアで変わらないのですね。
国別にみた年齢調整発症率
国別にみた乳癌の発症率を見てみましょう。
主に欧州、北米、豪州あたりの発症率が高いです。
国別にみた年齢調整死亡率
乳癌の年齢調整死亡率はどうでしょうか。
アフリカ、アジアの一部の死亡率が高いのが分かります。
地域で見た年齢調整発症率と死亡率
年齢調整発症率と死亡率は以下の通りになります。
発症率は、北米、欧州、豪州・ニュージーランドなどが高いのが分かります。
一方で、死亡率はメラネシア、ポリネシア、アフリカなどで高い傾向にあります。
発症率の経時トレンド
発症率の経時トレンドを見てみましょう。
一般的に、乳癌は様々な地域で増加傾向にあります。
死亡率のトレンド
一方で、死亡率は徐々に減ってきています。おそらく、スクリーニングで早期発見が可能になったのと、治療が徐々に進歩してきたためでしょう。
乳癌の危険因子について
乳癌の危険因子として代表的なものは年齢や女性ホルモンですが、それ以外にもいくつか危険因子が分かっています。
タバコ | 最もメジャーな危険因子 |
年齢 | 50歳以降に診断されることが多い |
運動 | 運動不足は乳癌の危険因子 |
ホルモン補充療法 | ホルモン補充療法を閉経後に5年以上使用すると、乳癌のリスクが上昇する |
出産歴 | ・出産なし ・30歳以降の出産 ・母乳の経験なし などは乳癌のリスク上昇 |
アルコール | アルコール摂取は乳癌のリスク上昇 |
遺伝子 | BRCA1とBRCA2 |
高濃度乳腺 (dense breast) |
高濃度乳腺でリスク上昇 |
月経歴 | ・12歳未満の初経 ・55歳以降の閉経 はリスク上昇 |
既往歴 | 乳癌の既往歴 |
家族歴 | 乳癌の家族歴 |
放射線治療の既往 | 放射線の被曝は乳癌リスク上昇 |
DESの使用歴 | Diethylstillbestrol (DES)の使用歴は乳癌のリスク上昇 *1940-71年に流産のハイリスクの女性に使用されていた |
おわりに
今回は乳癌の国際的な疫学について簡単に解説してきました。
気になる方は、IARCはGLOBCANなどの資料を参照されると良いでしょう。
次回は大腸癌について解説していければと思います。
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