過去数十年にわたり、麻疹による死亡が顕著に減少してきました。これは、予防接種率の増加と麻疹の症例致死率(CFR)の低下の両方が原因です。
しかし、麻疹の死亡率の減少の一部は、予防接種のカバレッジの増加を通じて監視できるものの、麻疹の死亡数を正確に推定することは難しく、特にCFRの正確な測定に依存するインシデンスベースの推定方法が存在します。
このCFRは、地域や疫学的文脈、さらには年ごとの同じコミュニティによって大きく異なります。この背景を踏まえ、1980年から2008年までに公表された地域ベースの研究をレビューし、年齢別の麻疹CFRの変動をよりよく理解することを試みた研究があります。
Wolfson LJ, Grais RF, Luquero FJ, Birmingham ME, Strebel PM. Estimates of measles case fatality ratios: a comprehensive review of community-based studies. Int J Epidemiol. 2009 Feb;38(1):192-205. doi: 10.1093/ije/dyn224. PMID: 19188207.
麻疹の症例致死率の推定:地域ベースの研究による包括的なレビュー
研究の背景/目的
過去数十年にわたり、予防接種率の増加と麻疹の症例致死率(CFR)の減少の両方のため、麻疹による世界的な死亡が顕著に減少しています。
麻疹の死亡率の低下の一部は予防接種のカバレッジの増加を通じて観測できる一方、麻疹死亡のレベル(絶対的な意味で)を推定することは問題がある。
特に、インシデンスベースの推定方法は、麻疹CFRの正確な測定に依存しています。
これらの比率は、地理的および疫学的な文脈、さらには同じコミュニティ内での年ごとの変動によって大きく異なります。
研究の方法
CFRの変動をよりよく理解するために、1980年から2008年の間に発表された年齢別の麻疹CFRを報告する地域ベースの研究をレビューしました。
研究の結果
検索の結果は一貫して、麻疹CFRが5歳未満の未接種の子供で最も高く、アウトブレイク時に最も低いことを示しています。
また、設定に関係なく、予防接種を受けた子供ではCFRが最も低いことが示されています。
ケースと死亡の定義、研究集団、地理の幅広い範囲は、グローバルな公衆衛生計画のための結果を外挿する複雑さを強調しています。
結論
麻疹CFRの値は正確でなく、麻疹が正確にどれだけの死亡をもたらしているかについての不確実性が続いています
考察と感想
この研究の時点で、世界保健機関(WHO)が低所得国で使用しているCFRの推定値は、0.05%から6%の範囲でした。複雑な緊急事態や孤立した地域、自然免疫が低いか、または予防接種のカバレッジが低い場合、CFRはしばしば10%から30%の間という報告があるようですが、正確性に乏しいことが問題だったようです。
この報告によると、低所得国の小児の麻疹の症例致死率は
- 0~11ヶ月:中央値のCFRは16.45(0.59, 32.3)
- 12~23ヶ月:中央値のCFRは16.86(5.44, 28.28)
- 24~35ヶ月:年齢別のCFRは14.81(6.73,22.89)
- 36~47ヶ月:中央値のCFRは8.03(-0.86, 16.92)
- 48~59ヶ月:中央値のCFRは2.24(-0.39, 4.87)
という結果でした。途上国というのもあり、なかなか厳しい値ですね。アフリカ、中東、南アジアの地域のCFRが高い傾向にありました。
特に、0~35ヶ月の乳幼児ではCFRが比較的高く、36ヶ月以降でCFRが低下する傾向が見られました。
これは、特定の年齢層、特に幼い子供たちが麻疹に対して高いリスクを持っていることを示しています。
これらの結果は、麻疹の予防策や治療戦略の対象となる年齢層を特定する上での重要な指標となる可能性があります。
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