水痘(水疱瘡)のまとめ
- 水痘は水痘帯状疱疹ウイルスの初感染で起こります
- 空気感染によって広がり、感染力は強いです
- 潜伏期間は10〜21日程度です
- 痒みを伴う水ぶくれ(水疱)から痂皮(かさぶた)になり治癒します
- 登園または登校の許可は全ての発疹が痂皮化してからです
- 水痘ワクチンの予防接種で防ぐことができます
水痘(みずぼうそう)ってなに?
水痘(水ぼうそう)は、水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)に初めて感染したときに見られる急性の感染症です。
水痘は英語で “chicken pox” や “varicella”といわれます。
水痘・帯状疱疹ウイルスについて
水痘−帯状疱疹ウイルスはヘルペス科に分類されるウイルスです。
初感染の後は、ずっと身体の中の知覚神経(脊髄後根神経節)に潜伏します。
潜伏したウイルスは、加齢やストレスなどで免疫抑制状態が低下した場合に再活性化し、帯状疱疹を発症することがあります。
水痘の感染力は非常に強いです
水痘の感染力ですが、 「麻疹(はしか)より弱いが、ムンプス(おたふく)や風疹より強い」 といわれています。
家庭内接触での感染は90%と報告されています。
感染力が強いのは水痘の発症2日前からで、全ての発疹が痂皮化するまで伝染力があります。
このため、幼稚園・学校への登園・登校許可は “全ての発疹が痂皮化するまで” と規定されています。(学校保健安全法施行規則)
この間は登園・登校はできませんし、周りの人への感染を防ぐためにも、人混みや公園にはいかず、可能な限り自宅にいるようにしましょう。
水痘(水ぼうそう)の症状について
水痘の潜伏期は通常 2週間程度 (10-21日) といわれています。
潜伏期とは、ウイルスに感染してから明らかな症状が出るまでの期間のことです。
水疱ができる時期について
最初は痒みを伴う赤い発疹 (紅斑) が出現します。 紅斑が出た後、3〜4日ほど経過すると、水ぶくれ(水疱)となります。
水疱は頭皮→体幹→四肢の順に出ることが多いです。
頭皮に出来るのが特徴で、小児科医はこの所見をみて水痘と判断することもあります。
最終的に水疱は破裂して、かさぶた(痂皮)となります。
通常は1週間前後で治癒することが多いです。
発熱することもあります。
熱は発疹がでてから2〜4日くらい持続します。
水痘の合併症について
合併症として:
- 肺炎
- 髄膜炎
- 脳炎
- ライ症候群(アスピリン内服)
があります。
特にライ症候群はアスピリン内服時に起きることがあります。
心疾患や川崎病でアスピリン内服している患者さんは、主治医の先生と相談して内服をどうするのか確認されたほうが良いでしょう。
また、皮膚から細菌が感染して膿瘍や蜂窩織炎という皮膚の感染症を起こすことがあります。
免疫能が低下している患者さんは要注意!
さらに、白血病などの悪性腫瘍や免疫能が低下している患者さんは重症化しやすいため、より注意が必要です。
水痘の診断方法について
診断方法は大きくわけて;
- 臨床診断(医師の診察)
- 水疱の塗抹染色:Tzanck smear
- 血液検査:抗体価測定
- 遺伝子増幅検査:PCR
があります
通常は見た目ですぐわかるため臨床診断で十分と思います。
疑っているが、確信がもてない場合には血液検査をすることもあります。
塗抹検査や遺伝子検査は限られた病院でしか行えないので、一般的な検査ではありません。
水痘の重症度は予測できますか?
日本の小児科の先生が作った「水痘の重症度スコア」というのがあります ;
体温、発熱期間、腰から胸の発疹の数で、ある程度治癒するまでの期間が分かります。
スコアが高ければ高いほど、病気の症状が重くなるといえます。
水痘の治療について
抗ウイルス薬(アシクロビルなど)の開始は、発症後 48時間以内が望ましいとされています。
4−5日間投与するのが一般的です。
健常児すべてに必要ではないが、投与基準に関しては議論がわかれています。
抗ウイルス薬の投与が勧められているのは :
- 12歳以上の小児
- 家族内の発症
- 慢性の皮膚あるいは心肺疾患のある児
- 経口あるいは吸入ステロイドを行っている児
- 長期的にサリチル酸を内服している児
です。
暴露後予防としてのワクチン接種について
家族や友人など水痘患者に接触した際、3日以内にワクチンを接種すれば発症を予防できるとされています。
病院でも入院中の患者さんが水痘を発症するケースがあり、この場合にはワクチン未接種のお子さんに暴露後予防としてワクチン接種を行うこともあります。
予防接種について
水痘の予防接種は、水痘-帯状疱疹ウイルスを弱毒化してつくった生ワクチンです。
このワクチンは日本が世界に先駆けて開発されたものです。
しかし、皮肉なことに日本人のワクチン接種率は欧米と比べて低いです。
ワクチンの有効性は非常によく確立されています。
1回接種で抗体獲得率は92%程度で、80%程度の予防効果があるといわれています。
仮に1回接種のお子さんが水痘にかかったとしても、症状は軽く済むことが多いです。
確実に予防するためには2回接種をすることをお勧めしています。
ワクチンの副反応について
ワクチンの副反応はほとんど認められませんが、時に発熱・発疹がみられることがあります。
平成26年10月に定期予防接種となり、水痘の発生は激減しています。
ですので、1歳になったらなるべく早く予防接種をするようにしましょう。
予防接種の対象は生後12ヶ月から生後36ヶ月のお子さんです。
1回目と2回目のワクチンは3ヶ月以上は空けるようにしましょう。
標準的な接種期間は1回目に生後12ヶ月から生後15ヶ月、2回目は初回接種から6-12ヶ月程度空けて行います。
登校・登園許可について
水痘は第二種の伝染病に属します。
登校基準は以下の通りです:
“すべての発疹が痂皮化するまで出席停止とする。ただし、病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではない。 “
基本的に、全ての発疹がかさぶたになってから登校許可になっています。
参考文献
- 予防接種とこどもの健康(2016年度版): 予防接種ガイドライン等検討委員会
- 永井崇雄ら: 小児科臨床50: 273-279. 1997
- 船越康智ら: 小児科 55: 1383-1394. 2014