「小児は新型コロナウイルスを他者へ感染させる可能性が低い」という点は、過去の研究で明らかになっています。一方で、これらの研究の多くは、サンプル数が少なく、限定的な環境下で実施された研究でした。
そこで、今回は、サンプル数を多く集めて研究が行われたようです。
米国のチャイルドケアプログラムでは、かなりの感染対策がなされていたようです。米国での新型コロナウイルス・パンデミックの最初の数ヶ月間において、チャイルドケアへの曝露は、新型コロナウイルス感染のリスク上昇とは関連していなかったという結果だったようです。
- アメリカで行われた研究
- 保育所への勤務継続が新型コロナの感染と関連しているか調査
- ほとんど関連性を認められなかった
2021年1月に公表されたようです。
保育所勤務における新型コロナウイルスの感染は?[アメリカ編]
研究の背景/目的
学校や保育の再開をめぐる議論の中心は、子どもたちが新型コロナウイルスの効率的な伝達者か否か、さらに、プログラムが再開されたときにコミュニティへの広がりを増加させる可能性があるかどうかである。
米国における新型コロナウイルス・パンデミックの最初の 3 ヶ月間に、直接対面保育を継続した保育者におけるアウトカムと、そうでない保育者におけるアウトカムを比較した。
研究の方法
米国の保育者(N = 57 335)からデータを取得し、COVID-19の陽性反応が出たことがあるか、または入院したことがあるか(N = 427例)と、保育への暴露の程度を報告した。
バックグラウンド感染率は統計的にコントロールされ、その他の人口統計学的、プログラム的、地域社会的変数が潜在的な交絡因子として検討された。
ロジスティック回帰分析は、非マッチおよびプロペンシティスコアをマッチさせた症例対照分析の両方で使用された。
研究の結果
チャイルドケアへの曝露と新型コロナウイルスの発症には関連性が認められなかった:
- unmatched OR = 1.06 [95%CI, 0.82–1.38]
- matched OR = 0.94 [95%CI, 0.73–1.21]
マッチングをした解析では、在宅での保育提供者は(保育センターを拠点とする提供者とは対照的に)は新型コロナウイルス感染症と関連していたが(OR = 1.59 [95%CI, 1.14-2.23])、曝露との相互作用は明らかにされなかった。
結論
米国では保育プログラムにおいても感染の可能性を緩和させる努力が行われている。
この中では、米国パンデミックの初期の数ヶ月間において、保育への曝露は新型コロナウイルス感染のリスク上昇とは関連していなかった。
これらの所見は、バックグラウンドでの感染率と保育プログラムで実施されたかなりの感染予防の努力の範囲内でのみ解釈されなければならない。
考察と感想
曝露(X)の定義がアブストラクトでは分かりづらかったので、本文を参照してみました:
曝露は、
- X = 1:パンデミック中に保育に曝露した
- X = 0:パンデミック中に保育に曝露しなかった
のいずれかとしてコード化されていたようです。もう少し詳しく説明されていて、
- 回答者がパンデミック期間中、プログラムがオープンのままであった
- 閉鎖されていたが再開された
- COVID-19の疑いまたは確認症例のため閉鎖
と回答した場合にはX = 1が割り当てられた。
一方で、
- パンデミック中にプログラムが閉鎖されたと回答
- パンデミック中に出勤しなかったか、遠隔地でのみ勤務していた
と回答した場合には、X = 0が割り当てられた。
という具合に分類されたようです。保育所に行って対面でクラスを開く可能性の有無で分けたようで、X=1 vs. X = 0と新型コロナ感染の有無(Y=1 vs. Y = 0)を比較したようです。
結果はアブストラクトの通りで、保育所への直接の勤務は、新型コロナウイルスへの感染の可能性にはほとんど影響していなかったようです。
一方で、勤務先が家族ベースであると、感染可能性はやや上昇する傾向にあったようです。
まとめ
アメリカで新型コロナウイルスのパンデミックが生じた初期の数ヶ月間において、保育所に勤務する方を対象に行われた研究のようです。
乳幼児と接触する機会のある保育所へ勤務を続けても、新型コロナウイルス感染のリスク上昇とはほとんど関連していなかったようです。
一方で、この関連性は、その地域での感染や、保育所における感染予防の努力などを考慮した上で解釈する必要があるようです。
新型コロナ関連の書籍↓↓
(2024/11/21 06:31:00時点 Amazon調べ-詳細)
(2024/11/21 06:31:01時点 Amazon調べ-詳細)
感染対策の書籍↓↓
(2024/11/21 06:31:02時点 Amazon調べ-詳細)
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
noteもやっています
当ブログの注意点について