アレルギー性鼻炎の原因
アレルギー物質と鼻の粘膜が反応し、炎症が起こった状態を『アレルギー性鼻炎』と呼んでいます。
一般の方は『花粉症』と呼んでいますが、正式には『花粉によるアレルギー性鼻炎』といえます。
アレルギー性鼻炎の原因は、1型アレルギーです。
1型アレルギーとは、花粉などのアレルギー物質に体のIgE抗体が反応し、好酸球など血球がヒスタミンを放出し、くしゃみや痒みが出ている状態です。
アレルギー性鼻炎の特徴
アレルギー性鼻炎の症状は;
- 透明で薄い鼻水
- 鼻づまり
- くしゃみが何回も出る
の3つです。これ以外にも、目や鼻の痒みが出ることもあります。
この中で、最も多い症状は鼻づまりです。
子供は鼻が小さいため、鼻づまりが起こりやすいのです。
また、アレルギー性鼻炎には;
- 季節性
- 通年性
- 一過性
の3つのタイプがあります。
通年性のアレルギー性鼻炎が一番多い
季節性のアレルギー性鼻炎は、花粉・草木・雑草などが原因になります。
通年性では、これに加えてダニ・ハウスダスト・動物・ゴキブリなどにアレルギー反応が出ていることが多いです。
一過性は、『動物園や友人宅で動物に触れたら目と鼻が痒くなった』が典型的です。
子どものアレルギー性鼻炎は『通年性』が多いです。
『スギの花粉だけに反応している』といった1つのアレルゲンにだけアレルギー反応がある例は少なく、『スギ、ヒノキ、ハウスダスト』など色んな物質にアレルギー反応を起こすことが多いからです。
アレルギー性鼻炎の原因
アレルギー性鼻炎の原因はよく分かっていません。
現時点で分かっているのは、
- 遺伝的な素因(つまり体質)
- 花粉・ダニなどアレルギー物質(アレルゲン)への暴露
の双方が重なって発症すると考えられています。
小児の10%〜25%がアレルギー性鼻炎にかかります。
2歳以下での発症は少ないですよ
乳児が少し鼻水が長引くと『花粉症が心配です』と相談されることもあります。
ですが、アレルギー性鼻炎は2歳以下で発症することは少なく、大抵は風邪が長引いているだけです。
特に6ヶ月以下の乳児は非常に珍しいです。
2歳以下でアレルギー性鼻炎を発症してしまう子は、ハウスダストへのアレルギーが多いです。
アレルギー性鼻炎の特徴的な所見
1. Dennie-Morgan線
『Dennie-Morgan 線』ですが、単なる『目の下のクマ 』です。
アレルギー性鼻炎で目の結膜炎も起こし、目を掻きすぎてクマができてしまいます。
2.鼻尖部の横すじ
『鼻尖部の横すじ』という鼻のシワがあります。
左の図のように、鼻がムズムズと痒いため、鼻を強くこすってしまい、右の図のように横線が出来てしまう状態をいいます。
アレルギー性鼻炎の診断
『アレルギー性鼻炎』の診断には、以下の手順を踏みます;
- 鼻水の好酸球数が上昇している
- 血液検査やプリックテスト(皮膚)で原因物質を特定する
の2つです。
アレルギー性鼻炎の治療
アレルギー性鼻炎の治療は;
- 原因物質を避ける
- 抗ヒスタミン薬の内服
- ステロイドの鼻腔噴射スプレー
- 鼻洗い
の4つをメインに行っています。
1.原因物質の除去について
血液検査や本人の症状から、原因となる物質を特定します。
花粉対策について
春は花の花粉が、夏は草木の花粉が、秋は雑草の花粉が舞います。
このため、花粉症専用のマスクや眼鏡をするように指導します。
『原因物質を吸わなければ、症状は起こらない』という考えです。
家の窓も開放しすぎないようにします。
室外の花粉が室内へと舞い込んでしまうためです。
ダニ・ハウスダスト対策
寝具やカーペット、カーテンなどにダニが住み着いているケースもあります。
部屋の湿度を50%以下に保つと、ダニは増殖しづらくなります。
ダニがいた場合、60℃以上のお湯で洗うとダニは死滅します。
また、ダニが寄生できないよう加工されている商品を使用してもよいでしょう:
ペット対策
動物の毛やフケにアレルギー反応を起こしていることもあります。
この場合、ペットを屋外へ移動させるよう指導します(が、実際には室内犬などが多く、難しいことが多いです)。
ペットを屋外へ移動しても、アレルギー物質は4ヶ月くらい室内に残存します。
2.抗ヒスタミン薬
鼻詰まり以外の症状(痒みや鼻水)にとても有効です。
月単位の長期的な内服が必要なため、安全性を考えて第2世代の抗ヒスタミン薬を使用するのが一般的でしょう。
第2世代の抗ヒスタミン薬は、ジルテック、アレグラ、アレロックが代表的です。
これらの薬は、脳へ移行しづらいため,眠気が起こりにくくなっています。
子供のかぜと抗ヒスタミン薬(ペリアクチン、ポララミン)の副作用
一方で、第1世代の抗ヒスタミン薬(ペリアクチン・ポララミン)は要注意です。
ペリアクチン・ポララミンは脳へ移行しやすいため、副作用が多く、眠気・不機嫌・イライラしやすくなったり、長期投与で認知機能や学校成績に悪影響が出ることがあります。
さらに、発熱時に痙攣しやすくなったり、尿閉・便秘が起こりやすくなるため、 小児への長期投与は推奨されていません。
3.ステロイド鼻腔噴射
ステロイドは炎症を抑える作用があります。
アレルギー性鼻炎では、鼻粘膜が炎症を起こしているため、ステロイドで炎症を抑えます。
ステロイドの内服薬とは異なり、鼻腔噴射剤には少量しかステロイドが含まれておらず、安全に長期使用できます。
4.鼻洗い
鼻に付着したアレルゲンと鼻水を洗い流して、鼻づまりを解消します。
鼻洗いの有効性ははっきりしていませんが、鼻づまりは確実に解消します。
(私個人としても、鼻洗いをするとスッキリするので、毎日しています)
アレルギー性鼻炎には合併症がある
気管支喘息のあるお子さんのうち、60%程度はアレルギー性鼻炎があると報告されています。
また、アレルギー性鼻炎があると喘息のコントロールも悪くなるようです:
喘息以外にも、慢性咳,中耳炎,副鼻腔炎、アデノイド肥大、睡眠時無呼吸を起こす場合があります。