エキナセアは、かぜ症状(急性上気道感染症の症状)をはじめとする、様々な状態において、治療薬としてよく使用されているようです。例えば、アメリカでの売上だかは3億ドルとも言われているようです。
エキナセアを含むHerbal medicineは、国内外で非常によく使用されており、欧州では60億ドル、日本では21億ドル、アメリカ・カナダでは15億ドルと推定されておるようです。
エキナセアが風邪などに有効な詳細なメカニズムは不明のようですが、一般的に免疫調整作用があると言われ、好中球やマクロファージの貪食を活性化させるようです。
成人では、「かぜ症状の改善にエキナセアが有効かもしれない」というRCTがあるようですが、小児においては予防効果が検討された研究はなく、今回、行われたようです。
(推奨ではありません)
- 小児のかぜ症状の予防にハーブ製剤が有効かを検討したRCT
- エキナセア、プロポリス、ビタミンCの製剤を使用
- 風邪の予防効果があり、症状の期間短縮にも効果がありそう
- データに関しておかしな点が複数あり、批判されている
Cohen HA, Varsano I, Kahan E, Sarrell EM, Uziel Y. Effectiveness of an herbal preparation containing echinacea, propolis, and vitamin C in preventing respiratory tract infections in children: a randomized, double-blind, placebo-controlled, multicenter study. Arch Pediatr Adolesc Med. 2004 Mar;158(3):217-21.
予防効果が示唆されるものの、不自然なデータがあり、議論が分かれている研究のようです。
エキナセア/ビタミンC/プロポリスは子供のかぜ予防に有効で安全?
研究の背景/目的
エキナセア、プロポリスおよびビタミンCを含有する製剤を12週間にわたり冬季に内服することで、小児の気道感染の予防効果があるか、安全性は大丈夫かを評価する。
研究の方法
430人の1~5歳の子供を対象に、二重盲検ランダム化比較試験が行われた。ハーブ抽出物製剤(215例)または偽薬エリキシル(215例)に無作為化した。
治療
対象者は、
- ハーブ製剤 (エキナセア 50 mg/ml, プロポリス 50 mg/ml, ビタミンC 10 mg/ml)
- プラセボ
のいずれかに無作為に割り付けられ、12週間投与された。投与量は、1〜3歳は5.0 ml、4〜5歳は7.5 mlであった。
アウトカム
主なアウトカムは、
- 風邪のエピソード
- 発熱日数
- 疾患の日数
などであった。
研究の結果
風邪のエピソードに関しては、
- 介入; 138回; 0.9回/人
- プラセボ; 308回; 1.8回/人
と、エキナセア、プロポリス、ビタミンCを含む製剤で少ない傾向にあった。
発熱の日数に関しても、やや短い傾向にあった:
- 介入: 2.1日
- プラセボ: 5.4日
総疾患日数および個々のエピソードの期間も, 介入群で有意に低かった。
副作用はまれで,軽度であった。
結論
エキナセア,プロポリスおよびビタミンCを含む製品の呼吸器感染症の発生に対する予防効果が認められた。
考察と感想
イスラエルにおいて、「Chizukit」という名で売られているハーブ製品のようです。
ただ、論文のデータを見ると不自然な点も多くあります。例えば、12週間で、プラセボグループの94%が風邪を引いていますし、中耳炎も43%、肺炎が23%です。実臨床をしていて、こんなに高頻度で風邪をひいたり、肺炎にまで進展するケースはそれほど多くはないと思ってしまいます。
この辺り、疑問にもった研究者らが、後日、レターを書いて批判をしています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14993079/
例えば、研究者数の単純な計算すら間違えている点を批判しています:
「215人参加されて、44人がドロップアウトし、168人が解析対象」
(215 – 44 = 171人であるべきところですが….)
エキナセアに関して
過去、いくつかの研究が行われていますが、エキナセアの製剤も少し複雑です。
使用する植物の
- 種類(Echinacea purpurea, Echinacea pallida,またはEchinacea angustifolia)
- 部位(根、葉、または植物全体)
- 抽出方法
- 他の植物抽出物の有無
により、その効能が異なる場合があるようです。
プロポリスに関して
プロポリスは様々な植物からミツバチによって集められた天然樹脂製品で, 呼吸器感染症の管理にも用いられてきたようです。
プロポリスは50%の樹脂と植物バルサム(vegetable balsam)、30%のワックス、10%のエッセンシャルオイルとアロマオイル、5%の花粉と5%のその他の物質 (ミネラル) で構成されています。
プロポリスはまた、一般的には抗炎症活性があり、これがウイルス感染に有効とされていますが、そのエビデンスの方は不明です。
まとめ
1歳〜5歳の小児において、エキナセア(Echinacea purpurea)、プロポリス、ビタミンCを含むハーブ製剤は,かぜ症状の予防に有効か検討したランダム化比較試験です。
予防効果は示唆されてはいるものの、単純計算の間違いがある、肺炎や中耳炎に発症した人が多すぎるなど、疑問の多いデータで、他の研究者からの批判も届いているようでした。
他の研究もみて、総合的に判断した方が良いと思います。
小児で使用される咳止めのエビデンスをまとめたnoteもあります。
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小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
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