1970〜2000年にかけて喫煙率は劇的に減少していますが、これは個々に起こったものなのか、集団としてのダイナミクスから生まれたものでしょうか。
この点を調査した研究があります。
- Framingham Heart Studyの一環として,1971年から2003年にかけて繰り返し評価
- ネットワーク解析で検討
- 禁煙は社会的なつながり(配偶者や友人)と関連していた
Christakis NA, Fowler JH. The collective dynamics of smoking in a large social network. N Engl J Med. 2008 May 22;358(21):2249-58. PMID: 18499567; PMCID: PMC2822344.
アメリカで2008年に報告された研究です。
大規模ソーシャルネットワークにおける喫煙の集団的ダイナミクス[アメリカ編]
研究の背景/目的
米国では過去30年間に喫煙率が大幅に減少している。
我々は、1) 喫煙行動が個人から個人へどの程度広がるのか、2) 広くつながりのある人々のグループがどの程度一緒に禁煙するのか、の2つを調べた。
研究の方法
我々は,Framingham Heart Studyの一環として,1971年から2003年にかけて繰り返し評価した。
12,067人の相互に密に結びつきのある社会的ネットワークを調査した。
ネットワーク分析法と縦断的統計モデルを使用した。
研究の結果
喫煙者と非喫煙者の識別可能なクラスタがネットワーク上に存在した。クラスターは3度まで広がっていた。
全人口で喫煙が減少しているにもかかわらず、喫煙者のクラスターの大きさは時系列で変わらず、集団全体が協調して禁煙していることが示唆された。
また、喫煙者は社会的ネットワークの周辺部にも徐々に見られるようになった。
配偶者の禁煙は、その人の喫煙の可能性を67%減少させた(95%信頼区間[CI]、59〜73)。
兄弟姉妹の禁煙は、その人の喫煙の可能性を25%減少させた(95%CI、14〜35)。
友人の禁煙は、その人の喫煙の機会を36%減少させた(95%CI, 12〜55 )。
小規模企業で働く人では、同僚の禁煙はその人の喫煙の可能性を34%減少させた(95%CI, 5〜56)。
学歴の高い友人同士は、学歴の低い友人よりも互いに影響を及ぼし合っていた。
これらの効果は、地理的に近い隣人同士では見られなかった。
結論
ネットワーク現象は禁煙に関連しているようである。喫煙行動は近接・遠隔の社会的結びつきを通じて広がり、相互に結びついた集団が協調して禁煙し、喫煙者は社会的にますます疎外されている。
これらの知見は、喫煙を減らし予防するための臨床的および公衆衛生的な介入に示唆を与えるものである。
考察と感想
ネットワーク解析の経験がないので詳細はわからないですが、友情の識別に方向性を加えて以下の3つのパターンに分けたようです:
- 対象者が接触者を識別する「主体認識友情」
- 接触者が対象者を識別する「接触認識友情」
- 相互の識別を行う「相互友情」
そして最も強い対人的影響を与えるのは「相互の友情」、次いで「主体が認識する友情」、「接触が認識する友情」の順と仮定していたようです。
数十年間にわたり禁煙は個人間で伝播していた事実は、人口レベルの喫煙率の減少の要因であったようです。
また、社会的ネットワーク内でつながりのあるクラスター全体がほぼ同時に禁煙したことから、局所的な禁煙のカスケードが存在したようでもあります。
このことは、禁煙の決断は個人が独立して行われるのみではなく、直接的・間接的に互いにつながった人々のグループによる選択が反映されていることが示唆されます。
人々は、ネットワーク内で、多かれ少なかれ、集団的な圧力を受けて行動しているように見えます。
実際、ピアサポートを提供する禁煙/禁酒プログラムは、そうでないプログラムに比べて成功率が高いという報告もあるようです。
まとめ
Framingham Heart Studyの一環として,1971年から2003年にかけてネットワーク解析で検討を用いて繰り返し評価したところ、禁煙は社会的なつながり(配偶者や友人)と関連していたようです。
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