今回は、小児の慢性ITPにおいて、ステロイドパルスを行なった症例集積の報告です。こちらはカナダで行われた研究のようです。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
慢性ITPの成人において、経口高用量 (HD) デキサメタゾン療法は高い完全寛解率が報告されている。
今回は、小児の慢性ITPにおいて、この治療法の有効性を検討する。
方法
平均28カ月(範囲、6〜120カ月)の慢性ITPの小児11例がHDデキサメタゾンのサイクル療法で治療された。
結果
短期的な反応性は、「治療開始当初の血小板数が50×10^9/L以下で、HDデキサメタゾンのサイクル終了後72時間以内に100×10^9/Lを超えるまで増加)とした。これは、41サイクルのうち、78%で観察された。
HDデキサメタゾンサイクル療法終了後6カ月以上経過観察された小児11例において、長期効果には1例の完全寛解(血小板数≧150×10^9/L)および3例の部分寛解(血小板数≧50かつ<150×10^9/L)がある。
副作用がかなり多かったため、3人の小児は6回目の治療サイクルを完了しなかった。
結論
デキサメタゾンの大量経口投与は、短期血小板応答の達成に有効な薬剤であるが、十分に確立された慢性ITPの小児の半数以下に長期寛解を誘導した。
大量デキサメタゾンのサイクル療法が、早期慢性ITPの小児の自然経過を変化させ、脾臓摘出を回避できるかどうかを確立するために、前向きの比較研究が必要である。
考察と感想
6ヶ月終了時点での結果が重要と思うので、それを中心に解釈すると
- 完全寛解:1/11 (9%)
- 部分寛解:3/11 (27%)
- 反応なし:7/11 (63%)
となります。意外と厳しい結果ですね。成人の方はもっと寛解率が高かったようで、著者らもこの点を言及していました。
反応性なしのうち5人は、結局は脾臓摘出に踏み切って、寛解に至ったようです。
副作用の報告もされていました。多いものから順にあげると
- 倦怠感(95%)
- 不機嫌(66%)
- 顔面紅潮(41%)
- 頭痛(32%)
- 易刺激性(29%)
- 腹痛(22%)
などが記載されていました。腹痛に関して、ラニチジンの併用は行なった上でのこのデータのようです。
まとめ
今回は、小児の慢性ITPにおいて、高用量のデキサメサゾンを投与した前向き研究です。
サンプル数はかなり少ないですが、高用量のステロイドを定期的に投与した場合でも、寛解率は40%ほどのようです。
一方で、副作用が多く、安全性の懸念もあります。
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