今回は、小児の慢性ITPにおいて、ステロイドパルスを行なった症例集積の報告です。こちらはイタリアで行われた研究のようです。
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
小児の慢性ITPにおける高用量デキサメタゾンの有効性を検討する。
方法
17人の患者がプロトコルに登録した。
デキサメタゾンは20 mg/m^2を1日2回の用量で、28日間ごとに4日間連続で6コース経口投与した。
結果
6コース終了1か月後、 6人の患者 (35%) は正常範囲内の血小板値を示した。
1年後、 5人の患者 (29%) は、正常な血小板値を示した。
5人の患者は反応性がない、 1人の患者は重要な副作用のため、完了前に治療を中止した。
治療前の罹病期間はデキサメタゾンに対する反応と逆相関していた:つまり、血小板減少症が30ヵ月以下であった患者10人中5人が寛解に達したのに対して、より長期間罹患していた患者7人では寛解に至らなかった。
副作用には、疲労や易刺激性、不安、腹痛、線条、多毛症、にきび、体重増加などがあった。
結論
成人で観察された結果とは異なり、著者らの患者では、デキサメタゾンパルス療法は均一に有効であることを証明しなかった。
しかしながら、患者の3分の1におけるその有効性、受容可能な副作用、および低コストの観点から、この治療は、難治性の慢性特発性血小板減少性紫斑病患者、特に診断から3年以上経過していない場合に考慮できると考える。
どの患者がこの種の治療に反応するかを明らかにするには、より大規模な研究が必要である。
考察と感想
6ヶ月終了時点での結果が重要と思うので、それを中心に解釈すると完全寛解:6/17 (36%)となります。
これまでの過去の論文の基準を使うと、1年後のデータになりますが、完全寛解は5/17、部分寛解は0/17、反応性なしは12/17となります。
副作用で治療を中断した患者が1名いたようです。
まとめ
今回は、小児の慢性ITPにおいて、高用量のデキサメサゾンを投与した前向き研究です。
サンプル数はかなり少ないですが、高用量のステロイドを定期的に投与した場合でも、寛解率は35%ほどのようで、成人での結果よりかなり低かったようです。
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