今回は、小児の自己免疫性の血球減少症において、リツキシマブを投与した報告です。こちらはイタリアで行われた研究のようです。
Long-term follow-up analysis after rituximab therapy in children with refractory symptomatic ITP: identification of factors predictive of a sustained response.
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
リツキシマブで治療した難治性の慢性ITPの小児患者49人(男33、女16)の長期追跡調査(中央値39.5カ月)を報告する。
方法
リツキシマブ(375 mg/m^2́/dose)週1回 x 4回の投与が基本だったようです。
リツキシマブの投与量は以下の通りだったようです:
Rituximab (Roche, Milan, Italy) was administered i.v. weekly at 375 mg/m2 in all patients. Most patients (35/49, 72%) received four weekly infusions, according to the treatment schedule used for oncology patients. Six (12%) received two infusions, four (8%) three infusions, three (6%) five infusions and one (2%) six infusions. All patients received premedication with acetaminophen, chlorphenamine maleate and/or hydrocortisone.
前投薬も行っていたようですね。
結果
リツキシマブ開始前の治療
49人のITPの小児全てにおいて、IVIG (全員) or ステロイド(47/49)が行われていたようです。
抗D免疫グロブリンは4人、シクロスポリンは3人、脾摘は5人がすでに受けていたようです。
治療の奏功
全体の奏効率は69% (34/49)であった。
このうち、21人の反応者は、治療から中央値20.2か月で>50×10^9́/lの血小板数を示した。
反応性を分けたデータは以下の通りです:
完全寛解 | > 15万/μL | 26/49 (53%) |
部分寛解 | 5-15万/μL | 8/49 (16%) |
奏功なし | < 5万/μL | 15/49 (31%) |
Kaplan‐Meier分析によると、最初のリツキシマブ注入から36か月においては、60%の再発無しの可能性 (RFS: relapse-free survival) は60%であった。
治療反応性に影響する因子
薬の投与回数および脾臓摘出の既往は全奏効率に影響しなかった。
完全奏効を達成した患者は、部分奏効患者よりも診断時および初回リツキシマブ注入時に年齢が高い傾向であった(5.6歳 vs. 9.7歳)
年齢の高い小児は、年齢の低い小児よりも、36か月時点で持続的反応 (RFS) の確率は高かった(88.9% vs.56.7%)。
早期反応(治療後20日以内)は、完全反応および持続反応)の両方と相関していた。
軽度で一過性の副作用が9/49の小児で観察された。4人は蕁麻疹、2人は軽度の頭痛、1人は頭痛と悪寒、2人は発熱と悪寒を認めたようです。
追跡期間中に主要な感染症や遅発性の副作用は報告されなかった。
結論
これらのデータは、難治性の小児ITPにおけるリツキシマブ投与の有効性および安全性のさらなるエビデンスを示した。
本研究の規模は小さいが、リツキシマブが年齢の高い小児患者においてより有効であり、より早期の反応が長期持続反応の確率と関連することを示唆する。
考察と感想
「反応性」に関して、先行研究とは異なる指標を用いてますね。。。
一方で、寛解率は過去の研究結果とかねがね同等でした。
Table 1で49名の患者データが示してあるのは良いかと思いました。
まとめ
今回は、小児の自己免疫性の血球減少症において、リツキシマブを投与した場合の経過を追ったイタリアの研究です。
小児の難知性ITPに関しては、この研究の治療レジメンでは完全寛解率は59%ほどでした。
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